インタビュートップ > Vol.17 ゼネラルモーターズ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 石井 澄人

ゼネラルモーターズ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 石井 澄人

日本とGMの関係は古く、その歴史は大正時代にまで遡る。1915年、梁瀬商会(現ヤナセ)がキャデラックの輸入販売を開始。1927年にはGMが日本法人である日本ゼネラル・モータースを設立、大阪に生産工場までを有していたが1941年に撤退、戦後はふたたびヤナセが正規代理店としてGM車を手がけていた。現在、ゼネラルモーターズ・ジャパンではキャデラックとシボレーを輸入し販売店ネットワークを通じたビジネスを行っている。2010年にインポーター業務開始以来初の生え抜き日本人社長となった石井澄人氏に今後のGM車のビジネス戦略について話を伺う。

ゼネラルモーターズ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
石井 澄人
1964年生まれ。トヨタ自動車でアフターセールス分野の販売店支援や新型車発売準備企画業務に従事した後、1996年ゼネラルモーターズへ入社。1998年GM米国本社で、新規商品開発プロジェクトや他自動車会社との戦略的提携プロジェクト業務に従事した。2003年帰国後、数々の主要ポジションを歴任し2010年より現職。
インタビュアー:フェルディナント・ヤマグチ

いわゆる“アメ車” ではない、いまどきのアメリカ車の存在を広めたい。

フェルディナント・ヤマグチ(以下F) 石井社長はもともとトヨタ自動車にいらっしゃったと伺いました。

石井 はい、トヨタには10年ほどいました。

トヨタでは最初にクルマの勉強をさせられるのですが、新車開発の一環として販売店が使う車両診断・修理のマニュアルを作ったりしていました。

市場の情報を収集して、品質改善に結びつけるという部署にいたときには、販売店の海千山千の部長クラスの方々と電話でやりとりしたり、現地、現物主義の方針で全国をまわっていました。

F 販売店というのは、トヨタにとってお客様になるわけですよね?

石井 もちろんです。私が前職で1番最初に覚えたことは、販売店はお客様である、ということでした。すごく勉強になりましたし、それは今も役立っています。その後も電気自動車や多品種少量のものをどうやって国内のトヨタの販売店ネットワークで点検整備するかを考える、といったおもしろい仕事をさせてもらいました。その流れのなかで、トヨタがシボレーのキャバリエを出すことが決まった時に、トヨタの人間としてそのプロジェクトに参加したんです。

F あ、所ジョージさんが宣伝していたやつですね。開発の段階から参加されたんですか?

石井 そうです。市場に出す数年前からですね。左ハンドル仕様を右ハンドルに変えたり、トヨタの基準に合わせて時間をかけてクルマを作り変えていきます。

F その後GMに移られたということですか?

石井 そうなんです。26歳で初めてパスポートを取ったくらいドメスティックな人間だったんですが、若かったこともあり、初めてのアメリカでその自動車文化に感銘をうけました。それから縁があってGMに入りました。入社は1996年でしたから、今年が終われば丸20年になります。

1996年からこれまでを振り返ると、例えばサターン、オペルやサーブといったブランドを扱ったり、日本のメーカーであるいすゞやスズキとの提携など、さまざまな変遷がありました。2010年以降はキャデラックとシボレーの2ブランドを扱っていますが、キャデラックはアメリカを代表するラグジュアリーブランドとして、一方のシボレーはデトロイト発のグローバル・ブランドとして推していこうと。この5年くらいはそういったブランド戦略をとっています。

F そもそもうんと昔、まだメルセデス・ベンツなどが日本に入る以前はガイシャと言えばアメ車で、高級車といえばキャデラックだったわけですよね。

石井 そう、我々の父親世代ですよね。キャデラックあるいはシボレーはすでに日本のマーケットに約100年存在しているブランドです。1915年にヤナセさんがキャデラックの輸入販売を始めています。

F まさにちょうど100年! しかもJAIAの倍の歴史がある。

石井 そうなんですね。キャデラックブランドとしては今年で113年になります。セルモーターもオートマチックトランスミッションやエアバッグなども、世界で初めてキャデラックが開発したものです。歴史を振り返るとキャデラックには世界初のものがたくさんあります。

F キャデラックというと90年代にセビルのCMに桑田佳祐さんが出演してとてもヒットして、でもそれ以降はあまり見かけなくなった印象があります。いまや日本の輸入車市場はヨーロッパ車中心ですが、今後どのようにアピールしていこうと考えておられますか?

石井 長年キャデラックを見てきましたが、2008〜9年くらいからこの数年で商品がものすごく良くなっています。キャデラック SRXのマイナーチェンジの時に、これはものすごいな、と感じました。マイナーチェンジというレベルではない変化でした。それからコンスタントにいい商品が出続けています。ただ、それをどう世の中に伝えていくのか。これまで100年をかけて積み重ねてきたブランドを基に、転換していかなければいけないこともあると思っています。

F 最近のキャデラックはどんなモデルがあるのですか?

石井 ATSあるいはCTSといったセダンがあります。ATSはいわゆるCクラスや3シリーズ、CTSはEクラスや5シリーズなどとの競合になりますが、お客様の半分以上が新規で、そういったドイツなどのラグジュアリーブランドから乗り換えられています。あれ? 最近キャデラック面白くなってきてるね、と選んでくださるようです。

F そうなんですか。それは意外でした。新しいお客様はキャデラックのどこに魅力を感じているのでしょうか?

石井 半分くらいの方々が、ATS、CTSともに外観と内装のデザインを1番の購入動機にされています。要するにカッコイイ、と。キャデラックはもともとデザインを大事にしているブランドです。これも手前味噌になりますが、自動車作りにデザイナーを初めて採用した会社もキャデラックなんです。

F 昔はデザイナーっていなかったんですか。きっとエンジニアが自分でつくっていたんでしょうね。

石井 あとキャデラックにはSUVで、エスカレードとSRXクロスオーバーというモデルがあります。

F ああ、エスカレードも一時期とてもよく見かけましたね。

石井 おそらく2代目、3代目の頃ですね。実は今年4代目にフルモデルチェンジしています。エクステリアデザインやインテリアの質感、安全性なども最新のもので、ラグジュアリーフルサイズSUVとして競合にもひけをとらない仕上がりになっています。

F なるほど、今度ぜひ試乗させてください。一方でシボレーですが、JAIAのデータをみると、ピーク時の1996年には23,732台。1996年といえば、あの頃はアストロなどが大人気でした。

石井 アストロもそうですし、カマロも大ヒットしました。当時はいわゆるミニバンがまだあまりなくて、日本車で言えばハイエースのワゴンとか、商用車をベースにしたものが主流で、日本車にはないカテゴリーとして日本でも非常に人気のモデルになりました。

F 本来はアメリカが発祥だったミニバンがいまでは完全に日本車の得意カテゴリーになってしまった。それはなぜだと思われますか?

石井 やはり商品そのものの魅力の問題ですね。アメリカのマーケットからは、ワゴン専用車が徐々になくなっていきました。ボンネットがあったほうが安全だよね、あるいは4輪駆動の方がいいよね、といった嗜好の変化にあわせてSUVとかクロスオーバーに商品群が移行していった。一方で日本のメーカーは、ミニバンのセグメントを拡充してきたわけです。

F なるほど。いま日本で買えるシボレーのSUVはどんなモデルがあるのですか?

石井 キャプティバですね。ファミリー向けで7人乗りのミッドサイズSUVがあります。

F こちらはキャデラックとは雰囲気がかわってファニーなデザインですね。それによくみるとシボレーのロゴってわたしのマスクについているマークとちょっと似ている。あ、このデザイン、パクリじゃありませんから(笑)。それはさておき、シボレーといえば、やはりコルベットですよね。C6(6代目シボレー コルベット)の時代から欲しいな、と考えている1台で、今年新型になってますます良くなっていると思いますが、いかがですか。

石井 C6よりもものすごく良くなっています。C6の時もいいよ、って言ってましたけど(笑)、やっぱり新型はいいですね。シボレー コルベットは歴史も伝統もあって、そして他のメーカーには作れない味わいがあります。本当に乗っていただければすぐに分かります。

F 以前はアメ車というと直線番長なイメージがありましたが、いまは全然違いますよね。

石井 今はまったく違います。ヨーロッパのスーパースポーツカーが好きなお客様にも十分ご納得いただける商品になっています。

F 実はコルベットって、このスーパースポーツのカテゴリーでは数少ない、トランク容量があるクルマで、前輪後輪を外せばロードバイクが積めるので、それで興味をもっているんです。

石井 入るとおもいますね。ゴルフバックも入りますし、このあたりがアメリカのクルマの懐の広さといいますか、実用的なところでもあります。エンジンも低回転からトルクが非常にあるので、街中をゆっくりと流すのも得意ですし、通勤からサーキット走行まで幅広く使えます。

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