インタビュートップ > Vol.1 日本自動車輸入組合(JAIA) 理事長 庄司 茂

日本自動車輸入組合(JAIA) 理事長 庄司 茂

日本自動車輸入組合(JAIA)は、1965年(昭和40年)に日本で自動車の輸入が自由化されたことを機に設立された、輸出入取引法に基づく非営利法人である。 今年設立50周年を迎えたことを機にあらためて、これまでの取り組み、そしてこれからの展望について、フェルディナント・ヤマグチ氏が日本自動車輸入組合(JAIA) 理事長の庄司茂に話を聞く。

日本自動車輸入組合(JAIA) 理事長
庄司 茂
1963年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学卒業後、伊藤忠商事に入社。自動車関連事業に携わり、94年からマツダモーターハンガリー、2009年からスズキモーターロシアと、伊藤忠商事が出資する現地法人の社長を務める。2012年8月よりフォルクスワーゲングループジャパン社長に就任。2014年よりJAIAの理事長を務める。
インタビュアー:フェルディナント・ヤマグチ

日本の乗用車市場における輸入車比率10%を目指して。

フェルディナント・ヤマグチ(以下F)  50周年おめでとうございます。先日仕事で輸入車試乗会にも参加させていただきましたが、実はわたし自身JAIAがどういう組織なのかよくわかっていない。年に一度いろんな輸入車に乗せてくれる親切な組合なのかな、みたいな感じで(笑)。いったいどういう組織で、何をやっているのか? 多くの方がご存知ないと思うのですが。

庄司 まず歴史的には大きく2つに別れています。50年のうち前半の30年と後半の20年で性格が少し異なります。前半は日本の輸入車黎明期に礎を築かれたヤナセの梁瀬次郎さんが理事長を務めておられて、主に輸入車事業の社会的認知を高めるような活動をやっておられた。
後半の20年は、現在もそうですが主たる目的は業界団体として正しいロビーイングをすることです。

F 正しいロビーイング?

庄司 それはすなわち輸入車を、輸入販売するにあたって認証関係やさまざまなルール、法規制などに直面するわけです。そこで各省庁と連携して、それらのルールを少しずつ国際基準に近いかたちに変更できないかといった相談を進めていくわけです。

F それはとても興味深いポイントなんですが、日本のルールというのは世界から見てどのようなものでしょう? 厳しいのですか?

庄司 厳しい、というよりは少しかわった独自の基準を採用していると言ったほうがいいかもしれません。わかりやすい例を1つあげてみると、排気ガスに関しては欧州ではPM(粒子状物質)を重要視します、一方で日本では光化学スモッグなどの要因と言われるNOxを重視する。どちらが正しいというわけではなくて、それぞれの考え方がある。また最近、海外ではエアバッグで火薬の代わりに水素ボンベを使うようになってきた。

F 欧州で広がっていると聞いています。

庄司 ところが日本では高圧ガスボンベはすべて検査を受ける必要があるんです。

F ボンベ1つ1つをですか?

庄司 1つ1つ。

F えーー!!

庄司 それはそもそも大きな貯蔵タンクを想定してのレギュレーションなわけです。こんな小さなボンベを、しかも車両に組み込んだ状態で輸入するなんてことは想定していなかった。

例えば最近話題の燃料電池車の水素タンクに関しても、日本ではタンクの素材が指定されている。それしか使えない。一方、欧州ではこういう基準に合致する素材を使いなさい、となっている。合致するなら選択肢はいくつかあるわけです。

F 日本のやり方では、時代が進んでもっといいものが出てきても・・・

庄司 ルールを変えない限りは使えないとなる。実はいまメルセデスさんも燃料電池車をもっていますが、日本のルールで規定された素材を使っていないから輸入できない。

F なるほど。トヨタのミライばかりが先行しているイメージですが、メルセデスにもあると。お話をうかがっていると、レギュレーションとして排他的で硬直化しやすいのはいまの日本のやり方のような気がしますが。

庄司 しかし、現実としてすでにルールが存在するわけですから、決まったものを変えるのはなかなか難しいわけです。事故が起きれば責任問題になりますし、その安全は誰が担保してくれるの? となる。

F しかし、欧州ではもう一般的なものとして認可がおりているわけですよね。その点は考慮されないということなのでしょうか。

庄司 最初はどうしてもそれはあくまで欧州のルールであって、という話になる。そこでわれわれが、基本的なルールは変えられなくとも多面的な方向からアプローチして、解決策をさぐるわけです。

「経済産業省と国土交通省、2つの監督官庁と協力してさまざな課題解決に取り組んでいます」

庄司 実はJAIAには2つの監督官庁がありまして、経済産業省と国土交通省がそうなんです。ですから、例えばこれらの監督官庁に省庁間の協議をお願いするとか、外国の機関に相談するとか、真正面からあたってもダメなものを1つずつ折衝していくわけです。

F なるほどなるほど。まさしく正しいロビーイング(笑)

庄司 JAIAでは、その日本流ともいえるメカニズムをきちんと理解しながら、経産省や国交省に協力いただいて、ものすごい数の案件に取り組んでいるわけです。1メーカーの声ではかなわないことも、業界団体が業界の総意としてお願いすれば、理にかなっているものはきちんと取り組んでいきましょうという話になる。

F しかし、もう何年も言われていることですが、先進国でこれほど輸入車比率が低いのは、日本だけですよね。

庄司 例えばドイツでは、日本車だけで12%くらいのシェアがあります。

F そんなにあるんですか。なんだか日本は携帯だけでなく、クルマもガラパゴス化している、そんな気がします。日本はまだ世界で4番目にクルマが売れる市場であるにもかかわらず、輸入車比率は9%くらいしかないと聞いたことがあります。

庄司 それは軽自動車を除いた登録車だけで見た数字です。いまの日本の乗用車は軽自動車が4割を占めているわけですから、軽自動車を含めると5%くらいになってしまいます。

F なるほど。最近輸入車が売れているような報道をよく目にするような気がしていたんですけど、実際はそれほど輸入車が増えているわけではないと。

庄司 外国メーカー車のピークは1996年で年間の登録台数は約33万7000台です。ちなみに昨年は29万台と30万台には届きませんでした。

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