理事長会見(2019年7月17日)

理事長会見 2019年7月17日

日本自動車輸入組合(JAIA)は2019年7月17日(水)、理事長会見を実施しました。
基調スピーチの内容は以下の通りです。

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上野金太郎 理事長

1. 2019年上半期の輸入車販売実績

昨年の外国メーカー四輪輸入車の販売実績を振り返りますと、30万9,405台を記録し、2年連続で年間30万台を超え、史上2番目の高い実績を達成しました。

本年に入り、上半期の外国メーカー輸入車の販売は、対前年同期比では若干減(1.8%減)となりましたが、上半期合計台数ベースでは14万9,010台を記録し、これは史上5番目の高い水準でした。また、日本メーカー輸入車を含めた全体は、17万6,125台となりました。

この背景として、一時的に一部車両の供給遅れが生じた幾つかのケースがあったものの、基本的には、会員各社が継続的に導入してきた幅広い先進安全技術を備えたニューモデル、また、ハイブリッド車やクリーンディーゼル車などの多様なパワートレイン構成、さらにはお客様の様々なライフスタイル・ニーズに対応するSUVやクロスオーバーなどの販売の好調が続いたことが挙げられます。

2. 2019年下半期の輸入車販売展望

市場環境面では、10月に消費税率の引き上げが予定されております。同時に、自動車税の恒久減税、「需要平準化対策」などの実施も開始されますので、過去のような「駆け込み反動減」が繰り返されないことを期待します。JAIAは、政府による税制改正や需要平準化対策の周知徹底に協力して参ります。また、JAIA会員各社は、残価設定ローンや低金利での様々なファイナンスプランなどをさらに推進する計画です。
加えて、JAIA会員各社は、今年上半期に発売した各種ニューモデル、すなわち、人口知能(AI)を活用する音声対話型システムを導入したモデルや、クルマの外からスマートフォンを使いドアロック/アンロック操作・リモート駐車などを行える機能を搭載したモデル、また、ドライバー異常発生時対応機能・事故回避ステアリング機能・後退時衝突警告/防止機能など、様々なセンシング技術による高い安全性を備えたモデルの供給を着実に拡大させるとともに、さらに最新の先端技術を搭載した魅力的なニューモデルを積極的に投入する計画です。

以上、申し上げたポジティブな要因を見込みますと、令和元年後半の輸入車市場は堅調に推移していくものと展望致します。

3. JAIAの主要活動

3.1市場活性化のための活動

第一に、重要な市場環境条件である税制関連については、当面本年は、10月より変更が予定されている税制改正の内容をお客様にわかりやすくご理解いただけるよう、JAIAは、政府の周知・広報に協力して参ります。
中期的には、来年度以降の税制改正に向けて、JAIAは、国際的に見ても過重なユーザーの税負担の更なる軽減と公平化を強く求める要望活動を、関係団体と連携しつつ、推進して参ります。
確かに本年10月1日から、自動車税引下げの最初の一歩は踏み出されましたが、引下げ幅が限定的で登録車と軽自動車の税負担の格差も依然として2倍以上残っており、加えて、既に課税根拠を失っている自動車重量税の廃止を含む抜本的見直しへの取り組みも必要です。

第二に、市場活性化のために、JAIAは、本年秋の東京モーターショーの際に引き続き共催団体となります。また、東京モーターショーに続いて開催される、大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌での地域モ-ターショーや地方輸入車フェア、更にはモーターサイクルショーへの会員の取り組みをサポートして参ります。

3.2環境・技術分野の活動

まず、世界各国で取組が加速している自動運転(Automated Driving)については、日本政府も、来年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせて、高速道路におけるレベル3の自動運転と地域限定でのレベル4の自動運転の実現をめざし、様々な取組みを始めています。

SIP-adusは、本年10月以降、フェーズ2の大規模実証実験を開始する予定です。JAIA としては、フェーズ1に続き、会員のフェーズ2への参加をサポートして参ります。また、レベル3自動運転実現のための法令整備については、本年5月に、道路運送車両法と道路交通法が改正され、一年以内の施行に向けて各種準備が進められています。JAIAとしては、今後策定される関係法令が、国際的に調和し公平な制度となるよう、所要の意見を提出して参ります。具体的には、データ記録装置などの自動運行装置の要件や基準適合性確認の手法、サイバーセキュリティーなどについて、国連での議論に沿った、国際的に齟齬の無い制度の実現が肝要です。

また、足元では、「交通事故ゼロ」の実現を求める社会的要請が高まっております。JAIA会員は、さらに取組みを強化して参ります。

第一に、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において本年6月に乗用車等の衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)新規則が採択されたところですが、AEBS装着車両のJAIA会員各社の販売に占める割合は年々増加しています。

第二に、車間・車線維持装置搭載によるLevel2の性能を有するモデルや対自転車衝突被害軽減ブレーキ、事故時の自動通報システムなど、高度安全機能を搭載したモデルについても、今後、着実に拡大していきます。

第三に、JAIAは、自動車アセスメント(JNCAP)評価検討会、先進安全自動車(ASV)推進検討会などの会合に積極的に参加し、関係各団体とともに、事故なき社会の実現に取り組んで参ります。

私共JAIAは、「交通事故ゼロ」という究極の目標を実現するための政策を立案する際には、安全規制の国際的調和と様々な新技術のポテンシャルが公平かつ包括的に反映されることを期待しております。

次に、お客様のさまざまな利便性向上のため、JAIA会員各社は今後さらに、クルマの外でスマートフォンを使った車両位置や車両状態の確認、ドアロック操作、リモート駐車など様々な機能を搭載したConnected Carの普及拡大にも努めて参ります。 

いまひとつ、注目しているのが、5Gの実用化へ向けた進展です。日本でも今年4月、5G用周波数の配分が行われ、今後は基地局整備の加速が期待されます。5Gの実用化は車車間・路車間通信への応用など将来の自動運転を加速させるとともに、車室内でのエンタテイメント性能の向上にも繋がると期待されています。JAIA会員各社は、IOT時代の進展の機会を捉え、自動車のConnect技術の進化を一層推進して参ります。

続いて、電動化を推進する活動について述べます。パリ協定の発効後、世界各国で、温室効果ガス削減の為の国際協調が進展しております。

欧州では、本年4月、2030年までに乗用車のCO2排出を対2021年比で37.5%削減するという極めて高い目標が設定されました。この目標を実現するために、EU加盟各国政府は、産業界による電動車の一層の開発・導入と並んで、飛躍的にインセンティブや充電インフラを拡大する計画です。

日本でも、今般、乗用車の2030年度新燃費基準策定に関する報告書が取りまとめられました。新基準値は、現行の燃費基準に対し、平均で44.3%の燃費改善を求めるもので、欧州とともに世界で最も厳しい基準となります。JAIAとしては、この新燃費基準達成に向け、電気自動車・プラグインハイブリッド車などを積極的に導入・拡大して参る計画です。また、日本政府には、飛躍的にインセンティブや充電インフラを拡大するために、抜本的な政策措置の拡充を期待致します。

また、新燃費基準については、今後数年以内に行われる中間評価の中で検討されるべき課題として、基準達成判定における柔軟性の確保なども残っています。JAIAとしては、より良い解決を図るため、海外市場における経験やJAIAの見解を積極的に情報提供することを通じて、今後の検討に協力して参ります。

ここで、JAIAの活動の基本目的は、究極の国際基準調和である「完全なIWVTAの実現」であることを確認させて頂きます。

改めて、近年の国際調和の進捗を振り返りますと、JAIAが長年その実現に向けて活動を続けてきたUNR0が2017年秋に採択され、本年4月から日本でも適用可能となりました。また、本年2月に日-EU EPAが発効しました。JAIAは日本政府のこれまでのご尽力に敬意を表するとともに、交渉を通じて多くの国際調和が実現したことを評価します。

今後まず、JAIAは、EPAの確実な履行を求めます。また、新たな独自基準の改正や策定がなされないよう求めて参ります。特に、JAIAは重要課題である、自動運転や燃費・排出ガス関連の基準や、完成検査に関わる制度の国際的調和が進展するよう、取り組んで参ります。

中長期的には、JAIAとして「完全なIWVTAの実現」に向けて、政府と協議をさらに行って参ります。

3.3輸入モーターサイクル活動

活動の二本柱の一本目は、「市場活性化のための活動」です。その第一は、JAIAモーターサイクル試乗会です。本年4月初旬に開催された、第5回試乗会では、JAIA会員が88台を出展し、49のメディアから134名の皆様にご参加いただきました。お陰様で、多様でsomething differentな輸入モーターサイクルの魅力を発信することができました。来年以降も魅力ある試乗会を継続開催する方針です。

第二に、2017年に始まった「二輪車ツーリングプラン」についても、JAIAほか関係団体の要望が実り、対象地域を北海道にも拡大して、今年の4月26日より開始され11月末まで実施中です。

第三に、今年のバイク・ラブ・フォーラム(BLF)は、山梨県で秋に開催予定であり、JAIAは引き続き参加します。

活動の二本目の柱である「規制の国際調和を図るための活動」についても、JAIAは、安全・環境規制の更なる国際調和の実現を目指して、積極的に活動して参ります。

4. 結び

結びに、私共JAIAは、CASEの進展の機会を捉え、今後さらに幅広いお客様へ、先進性のある魅力的な輸入車・モーターサイクルを更にお届けし、関係機関と協力しつつ、日本の自動車市場の持続的発展に一層貢献して参ります。