理事長会見(2015年7月22日)

理事長会見 2015年7月23日

日本自動車輸入組合(JAIA)は2015年7月22日(水)、理事長会見を実施しました。
理事長の基調スピーチ内容は以下の通りです。

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庄司 茂 理事長

設立50周年記念事業

JAIAは本年、1965年の設立から50周年を迎える。2月より、「日本が出会った名車たち」と題しての輸入車50年の歴史を彩った名車の展示、フォト&エッセイ・コントストの実施、ウェブサイトの専用コンテンツを開設して会員各社のトップ・インタビューの掲載、また5月には記念祝賀会の開催などの一連の記念事業を、輸入車を支えて下さった多くのお客様、メディアをはじめとする関係の皆様への感謝の気持ちを込めて実施してきた。おかげさまで一連の事業を盛大に執り行うことができ、ご参加いただいた皆様とご一緒に、輸入車50年の歩みを振り返るとともに、100周年に向けた将来を展望することもできた。

2015年上半期の実績

輸入車、なかでも外国メーカー車の販売は、一昨年が約28万台、昨年が約29万台と、おおむね順調に推移してきた。そして本年は、3月までは前年実績を下回ったものの、4月以降は回復に転じ、上半期の実績は前年同期比微増(0.5%増)の約14万5千台、日本メーカー車を含めた輸入車全体でも、約16万7千台と、ほぼ前年同期並みの結果(対前年同期比1.0%減)となった。

本年4月から、エコカー減税制度の基準が従来に比べ厳しくなり、免税ないし減税適用モデルの割合は、国産車についても輸入車についても減少したが、会員各社による多彩なバリエーション展開や最新装備の搭載、販売施策などが実を結び、外国メーカー車の実績は、直近の6月単月では一昨年の同月水準を超えた。

2015年下半期の展望

本年後半にかけてもこの基調は続くものと予想しており、2015年を通じた外国メーカー車の販売は、30万台が十分視野に入ってくるものと考えている。

しかし一方では懸念材料もある。我が国は中長期的には少子高齢化と人口減少という問題を抱えている。これは自動車市場全体が縮小に向かう可能性を示すものであり、輸入車を含む自動車産業にとっては大きな課題である。このように変化する市場環境のなかで、今後ますます高まるであろう安全や環境に対するニーズを満たし、多様化するお客様の期待に的確に対応し、魅力ある商品、サービスを提供していくことが求められている。

また、税制の変更により市場が大きな影響を受けることは過去の経験からも明らかである。昨年、消費税率が8%に引き上げられたことにより市場は大きく冷え込んだ。2017年4月には消費税率が10%に再度引き上げられることが決定されているが、お客様は税金にたいへん敏感である。自動車には消費税以外にも多くの税が課せられており、自動車を購入、維持するためにかかる過重な税負担を軽減することが重要な課題であることは言うまでもない。

この観点から、現在の自動車関連税制において、全てのセグメントが公平に扱われず、公正な競争が妨げられていることに危惧を抱いている。JAIAは、軽自動車を含めた自動車全体を差別なく取り扱うべきと考えており、税制上のインセンティブは、特定のサイズやドライブ・トレーン、あるいは排気量に偏るべきではなく、公平かつ合理的な基準に基づくべきであると、引き続き主張する。

活動と課題

1) 税制改正要望

JAIAは、従来から他の自動車関連団体と連携して自動車に係る税の「簡素化、軽減化」を訴え、具体的には、消費税との二重課税である取得税の廃止、また、一般財源化により課税根拠を失った重量税の廃止を強く要望してきた。昨年末の税制改正大綱では、「消費税率10%時点での取得税の廃止」は明言されたものの、残念ながら重量税は継続されることとなり、課題が残っている。さらに、一般財源化されたはずの重量税が、「道路の維持管理・更新等のための財源」として、再び事実上特定財源化しかねない状況となっており、大きな懸念を持っている。

したがって、取得税については消費税率10%時点での確実な廃止と、重量税については廃止を含めた抜本的な見直しを引き続き要望していく。

また、「税制改正大綱」には、自動車取得時に自動車税に対して環境性能に応じて新たな課税を導入する案が記載された。これは、実質的には財源確保のための取得税の付け替えであり、断じて容認できない。

さらに、いわゆるエコカー減税制度に関して、JAIAは、将来のモータリゼーションの発展を見据え、次世代自動車から内燃機関車までを通じ、すべてのパワー・トレーンを考慮し、バランスの取れた環境性能向上を促す、公平で合理的な基準に基づくものとすべきことを強く求め、輸入車が不利となる制度が構築されることのないよう、今後とも、さらに要望活動を展開する。

2) 技術、環境案件への取り組み

(1) 電波法に基づく規制の国際調和

まず、電波法に基づく規制の国際調和について、当面の問題が解決に至ったことを報告する。

この案件は、先進安全自動車に搭載される車間距離制御システムや、衝突被害軽減ブレーキに用いられる76GHz 帯レーダについて、国際的に認められている1GHzまでの周波数バンド幅が、日本では500MHzまでしか認められていなかったことから、2年前より、総務省に電波法関係規制の国際調和のための改正を要望してきた案件である。

JAIAは、関係審議会の下の作業班での検討への参画などを行ってきたが、この活動がようやく実を結び、去る6月26日にJAIAの要望に対応した関連告示の改正が実現した。これで、ようやく障害物の検知をより精緻に行うことができる高性能な装備を搭載したモデルの輸入が可能となり、交通安全面での性能が一層高まることが期待される。改めて、総務省をはじめとする関係の方々のご理解、ご協力に御礼を申し上げる。なお、今後も、既存の法律や規制の存在が、あるいは適切なルールの欠如が、自動運転に関する新たな技術の円滑な導入を妨げるといった類似の事態が発生させることが想定されるが、JAIAは、今回の成果を踏まえつつ、グローバルな視点から、合理的な解決策に向けた適切な取り組みを、関係方面に対して、必要に応じて要望し続けていきたいと考える。

(2)自動車の騒音規制

現在、四輪自動車の走行騒音の試験方法および近接排気騒音の規制については、日本独自の基準が採用されている。このため、国連の基準に適合し、その認可を取得している車両であっても、日本独自の基準に則した試験を改めて実施する必要があり、これが会員各社にとって大きな負担となっている。

この自動車騒音規制について、15年間にわたり、日本とEU、欧州各国、関係業界が、より実態を反映した新たな試験法を用いる規制改正案の協議を続けており、JAIAはこの間、国際的に調和された騒音規制への改正を求める要望活動を行ってきた。そしてようやく、今年6月の国連の会議において、この規制改正案が満場一致で採択され、2016年から採用されることとなった。

今後、この改正により会員各社の負担は大きく軽減されることになる。環境省、国土交通省をはじめとする関係の方々の長年のご努力に敬意を表す次第である。

(3) 国際的な車両認証制度(IWVTA)

日本の国土交通省のイニシアティブにより、国連の自動車基準調和世界フォーラムにおいて、2016年中の国際的な車両認証制度である、IWVTA(International Whole Vehicle Type Approval)創設に向けた活動が進められている。この制度全体が完成すれば、IWVTAで認可された車両について日本における認証作業が不要となるため、JAIAはこれを高く評価するとともに、大きな期待を寄せている。しかし、2016年に制度がスタートする段階では、残念ながらまだ基準調和に時間のかかる各国独自基準が残ってしまう。

国土交通省をはじめとする関係の方々が各国と緊密に連携し、残された基準の国際調和のスピードアップに努力されることを希望する。

(4)次期排出ガスおよび燃費基準へのWLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedures)採用

乗用車等の国際的に調和した燃費および排出ガスの試験方法であるWLTP の策定作業は、ジュネーブにおいてPhase1まですでに終了しており、日本では次期排出ガス基準でWLTPを採用するべきことが答申されている。また、WLTPに基づく燃費試験結果の使用についても議論が始まったところである。

この国際調和された試験方法の採用自体は、かねてからJAIAが要望してきた項目であり、歓迎すべきことであるが、その採用のタイミングについては、海外メーカーおよびインポーターの準備状況を踏まえた適正な時期に切り替えられることがポイントとなることから、この点について、今後も関係省庁に要望活動を継続する。

3) 二輪車事業

第一に、二輪車の国内市場の活性化につながる活動を強化している。

本年4月には、念願であったメディアの皆様を対象としたJAIA 二輪史上初めての合同試乗会を大磯において実施した。二輪専門誌、一般紙をはじめ多くの方々にご来場いただき、誌面、インターネット、テレビ報道等を通じ、輸入二輪車の魅力を幅広いユーザーにアピールすることができた。これは、顕著な成果であったと考えている。  

今後さらに、合同の展示会、試乗会を開催し、輸入モーターサイクルのさまざまな魅力を、幅広いユーザーに発信していく計画である。

第二に、二輪車についても、基準の国際調和や認証取得の効率化のための活動を推進している。

まず、二輪車両法規の国際基準調和関連活動については、騒音規制に関し、来年2月に近接排気騒音の相対値化を実現する告示改正が行われ、基準が完全国際調和化される目途が立ち、また、灯火器関連規制に関しても、一部(DRL)を除いてこの6月には国連基準への調和に至り、着実にJAIAの活動の成果があがっている。また、PHP(「輸入自動車特別取扱制度」)に関しても、すでに4社が取得し、登録台数の過半を占めるまでになっており、認可取得の効率化に大きく貢献しているものと考えている。

東京モーターショーへの共催参加

JAIAは2011年より共催団体として東京モーターショーに参加しており、それは、本年秋(10月29日~11月8日)に開催される「第44回東京モーターショー2015」においても同様である。

私自身も理事長就任以来、東京モーターショーが国際自動車ショーとしてより素晴らしいものとなるよう、主催者である日本自動車工業会に協力して準備に参画している。特に、より多くの輸入車ブランドの参加を目指してさまざまな働きかけを行い、一定の成果をあげることができたと考えている。「東京モーターショー2015」では、さまざまな海外メーカーの出展が予定されており、ぜひ楽しみにしていただくとともに、最新情報が全世界に向けて発信されるようご協力をお願いする。