理事長会見(2013年2月13日)

理事長会見 2013年2月13日

日本自動車輸入組合(JAIA)は2013年2月13日(水)、理事長会見を実施しました。
会見要旨は以下の通りです。

上野 金太郎 理事長

理事長としての抱負

JAIAの役割の大きな部分は、会員であるインポーター各社の代表として、お客様の立場に立った公平な競争を推進するために、政府等の公共機関へ働きかけることにあると考える。そのためには、たとえば法律や規制の改訂また見直しに向けた活動も必要になってくる。1社だけでは難しいことでも、JAIAとして業界全体で行うことで、より強力な、また効率の良い仕事ができるので、この機能を強化してまいりたい。

また、輸入車をより一層普及させることにより、自動車業界のみならず、日本経済の活性化にぜひとも貢献したい。

JAIAは、「高い安全性や革新的な環境性能を備えた輸入車を幅広く提供」し、「世界で愛されるブランドが生み出す魅力ある製品」が、日本の自動車市場の活性化、さらには日本経済への貢献につながると考えている。

2012年の実績

昨年の国内自動車市場は、エコカー補助金の追い風もあり、年初から順調な滑り出しとなったが、補助金が終了した秋以降は、その反動により、一転してたいへん厳しい状況となった。登録車の販売は、2011年が東日本大震災による国内メーカーの生産縮小の影響が大きかったこともあり、相対的には26.1%増となったが、約340万台という数値は、ピークであった1990年と比べると実に40%以上も減少している。一方、軽自動車は年間を通して順調に推移しており、日本の自動車市場が、軽自動車へとますますシフトして行く状況がより顕著になっている。

輸入車のうち外国メーカー車の販売は、前年比17.3%増の約24万1千500台と、前年に引き続き順調な回復となった。この数値は、2000年代前半に安定的に推移していた24万台から25万台と同等なものであり、2008年のリーマンショック以降大きく落ち込んだ状況から、ようやく以前の水準に戻ることができたと考えている。

日本メーカー車を加えた輸入車全体では、前年比14.6%増の約31万6千台となった。これは、日本メーカーの海外生産が増加していることが要因だ。

外国メーカー車のうち、エコカー減税対象モデルは約57%に達し、制度の開始から3年余りが経過し、各メーカーが日本の制度に合わせたモデルを開発、投入した効果が確実に表れている。これも順調な回復の要因のひとつと言える。

エコカー制度へ対応するための技術的アプローチとして、欧州メーカーを中心に行われているエンジンのダウンサイジング、つまり小排気量化を図りながら過給機等を用いてパワフルな走行性能との両立が、ガソリン、ディーゼルの両面で実現している。近年、海外の自動車メーカーは日本の厳しい規制をクリアした新世代のディーゼルエンジンを日本市場に投入を始めており、お客様の選択肢を広げ、またこの流れに、日本メーカーも追従している。

これらのエンジンを効率の良いトランスミッションと組み合わせることにより、運転する楽しさを損なうことなく、環境に優しい、燃費性能に優れたクルマづくりが、日本のお客様に支持されている。さらに、生産される国の歴史や文化を背景に、個性豊かなモデルの投入も相次いでおり、それぞれ人気を博している。

2013年の展望

日本の自動車市場は、昨年秋のエコカー補助金の終了以降、厳しい状況に直面しており、新政権による新たなマクロ経済政策や、これに呼応した日銀の物価目標設定等の動きがあるものの、日本経済の先行きは依然として不透明。このような状況のなか、先日、与党による2013年度税制改正大綱が発表され、自動車取得税の将来の廃止が明言された。これは、私ども自動車業界が長年にわたり政府に要望を続けてきた点であり、その実現は喜ばしいことであるが、同様に私どもが廃止を求めている自動車重量税については、道路維持等のための財源として継続されることとなった。これは、引き続き自動車に対してのみ特別な課税を続けることを意味しており、JAIAは大きな懸念を持っている。

将来の税制改正については、JAIAは日本自動車工業会をはじめとする他の自動車関連団体と一層密接に連携を取り、公平かつ公正な税制改正が実現するようロビー活動を強化していく。

一方、昨年末の政権交代以降、円高の是正傾向やそれに伴う株価の上昇など、明るい見通しも少しずつ出てきている。また、2012年の外国メーカー車の登録台数は、24万台を達成することができた。これは、各社より日本市場が強く求める環境性能と経済性を意識した革新的なニューモデルが多く発売されたことが大きな要因であると考えている。2013年も、JAIA会員各社は、このように環境性能と経済性、また優れた走行性能を兼ね備え、日本のメーカーとは異なるアプローチで環境性能を高めた、いわゆる「輸入車らしさ」を求めるお客様のニーズにマッチした商品展開を継続することで、現在の基調を維持、拡大して行けるものと考えている。

従って、2013年の展望は、外国メーカー車で25万台が視野に入ってくる。JAIAは、会員各社がよりスムーズにニューモデルを導入できること、また新しい魅力的な技術ができるだけ早く日本のお客様に紹介できるよう、関係省庁等と連携、協力していく。

JAIAの活動

(1)技術、環境関連項目
JAIA会員各社は、国土交通省所管の道路運送車両法、経済産業省所管の省エネ法、自動車リサイクル法、火薬取締り法、高圧ガス保安法、環境省所管の大気汚染防止法、騒音防止法、廃棄物処理法、また総務省所管の電波法等、さまざまな法律のもとで、環境に優しく、また乗員と歩行者に安全な先進技術の導入に努め、日本の自動車モビリティのサスティナビリティに貢献しようと取り組んできた。しかしながら、海外ではすでに導入されている新技術が、日本では導入が困難な場面にたびたび遭遇している。 

環境に優しく、安全に役立つ新技術の導入普及促進の観点から、JAIAが現在最も期待しているのは、国土交通省を中心に日本政府が推進する国連自動車基準調和世界フォーラムで検討されている、世界統一車両認証制度の構築だ。JAIAは、国ごとの独自規制が極力残らない形でこの制度が早期に実現するよう、出来る限りのサポートをする。

世界統一車両認証制度は、2016年に導入が開始されるが、その時点でこの制度に含まれていない規制、あるいは2016年を待っていては環境や安全面への対応が遅れてしまうものがある。これらの課題に関しては、今直ぐに取り組んで欲しいと考えている。
具体的には、次の4点があげられる。
 (a)世界統一排気燃費試験法
 (b)燃料電池車の水素タンク
 (c)環境に優しいエアバッグ
 (d)オゾン層保護・地球温暖化防止のためのエアコン冷媒導入

(a)世界統一排気燃費試験法
燃費と排ガスの基準は、私どもの商品企画と技術開発に大きく影響する。現在、2020年の燃費基準が三省庁合同の検討会で決定され、その際、国連自動車基準調和世界フォーラムで合意された国連世界統一試験法の採用検討が決定している。

JAIAは、行政刷新会議の提言に基づいて行われた、国内排ガス試験への世界統一試験法導入の第一歩として、2013年度においてこれを検討する旨の閣議決定を歓迎する。また、2020年の燃費測定への世界統一試験法導入と、その次のステップとして、排気規制値の統一と世界統一車両認証制度への排気統一認証の導入をお願いしたい。

JAIAの最終的な目標は、欧州、あるいは米国において認証された車両が、追加試験を受けることなく、そのまま日本市場に導入できるようになることにある。

(b)燃料電池車の水素タンク
海外メーカーは、燃料電池車の実証実験を世界の主要マーケットで実施している。米国、欧州、また中国でも実証実験の実施が認められた新技術が日本では認められず、日本での実施をあきらめた事例が複数ある。これらは、高圧ガスタンクの自動車への採用を前提としていない、高圧ガス保安法の規制によることが原因だ。

燃料電池車にも国連世界統一試験法が検討されているが、こちらにおいても日本独自の規制が障害となっている。JAIAは、昨年4月に行政刷新会議の中間報告で提言されたように、日本政府に、欧州やISO規格をはじめ、海外で認可された高圧ガスタンクの使用を認可するよう要望する。

(c)環境に優しいエアバッグ
水素を用いたエアバッグは、副生成物が水だけとなり、人体および環境に優しいことから、欧米では急速に普及している。しかしながら、日本では高圧ガス保安法の規制により、輸入検査要件の問題があり、事実上輸入できない状況となっている。本件は、点火装置として水素を用いることへの安全性の問題ではなく、輸入検査要件自体に問題の本質がある。JAIAは、現行の検査要件の緩和措置を、水素エアバッグインフレーターの高圧ガス保安法からの一括適用除外という抜本的措置の実現に向けての第一歩として求めている。

(d)オゾン層保護・地球温暖化防止のためのエアコン冷媒導入
オゾン層保護と温暖化防止に役立つエアコン冷媒は、欧米ではすでに導入が始まっている。ところが、日本では可燃物として扱われるため、やはり導入が極めて困難な状況にあり、ここでもまた、高圧ガス保安法が問題となっている。

高圧ガス保安法では、冷媒の充填には防爆エリアと防爆仕様の充填機が要求されるが、自動車のサービスショップではこれに適合するエリアの設定と充填機の準備が困難であり、現実的ではない。欧米ではそのような規制はなく、すでに採用が始まっている。このように環境保護に役立ち、欧米で実用化が開始されている技術や製品が日本でもスムーズに導入できるよう、早期の規制緩和措置を求めていく。

(2)安全装備の普及促進策への期待
日本政府は、エコカー普及のためのインセンティブや補助金には非常に積極的だが、私どもが期待しているのは、事故削減に役立つ安全装備への税制インセンティブや補助金の導入だ。

現在、大型車の衝突被害軽減ブレーキには税制上の優遇策が適用されている。しかし、乗用車に対してのインセンティブ適用は皆無だ。JAIAは、このような装置の普及のためのインセンティブや補助金の導入を提案していく。 

自動車保険では、すでにエアバッグ割引、ABS割引、衝突安全ボディ割引等があるが、その後は対象となる安全装備の拡大は行われていない。

現在のところ、安全装置普及のための促進策は自動車アセスメントプログラムのみになっており、満足できる状況にはない。
JAIAは、先進安全装置普及のためのより広範囲な適用を求めていく。

(3)税制改正要望
JAIAは、従来から他の自動車関連団体と連携して自動車に係る税の簡素化、低減化を訴えており、取得税と重量税の廃止を強く要望してきた。しかし、2013年度与党税制改正大綱においては、取得税の廃止は明言されたものの、残念ながら重量税は継続されることとなり、課題が残った。さらに、「自動車重量税を道路の維持管理・更新等のための財源として位置づけ、自動車ユーザーに還元されるものであることを明らかにする方向で見直す」等の方針が示され、一般財源化により課税根拠を失った重量税が、再び特定財源化しかねない状況となっており、私どもは重大な懸念を持っている。

保有時にかかる税としては、自動車税と自動車重量税があり、自動車ユーザーはたいへんに重い税負担を強いられている。私どもは、自動車重量税の廃止を一層強く求めて、他の自動車関連団体と連携して活動していく。

この、他団体と共通の要望項目に加え、JAIAは次の2点を独自項目として要望している。
・保有に係る自動車税を、国際的な見地を踏まえ現行の軽自動車程度の水準とし、より排気量に直接対応した税率設定とする。
・燃料課税制度を抜本的に見直し、税負担を取得および保有から使用へと移行する。

また、海外メーカーは乗員や歩行者、また環境に優しい多くの新技術を搭載したモデルを開発しているが、日本で実施される政策的優遇措置において、ぜひともこうした状況に配慮した、国際標準を見据えた制度設計を行うことを強く求めていく。

(4)二輪車事業
JAIAが二輪車のインポーターを会員として迎え活動を開始してから3年目を迎えた。事業開始と同時に組織した「二輪車委員会」を中心に活動を行っているが、現在最も力を入れて取り組んでいる課題として、二輪車のPHP認証制度の構築がある。

輸入二輪車には、現在に至るまで四輪車のような型式認証制度が確立されておらず、このことは会員各社の手続きや費用負担、またお客様の利便性の面でその解決が求められている。私どもは、これまで国土交通省の担当者を招き勉強会を重ね、制度の実現に向けた取り組みを開始している。併せて、二輪車の排ガス、騒音規制の強化に対し、国際的な基準調和を踏まえた規制作りを提案していく。

また、もうひとつの課題として、縮小傾向を辿る小型二輪車市場の活性化がある。これに対しては、日本自動車工業会の二輪車特別委員会と協力して、具体的には高速道路料金の見直しと、二輪車の運転免許制度の改善を求めている。

終わりに

JAIAは、引き続き日本自動車工業会、日本自動車販売協会連合会をはじめとする他の自動車関連団体との連携や、経済産業省、国土交通省等政府関係部署との協調を通じて、輸入車市場の発展、安全で環境に優しいクルマ社会の発展のために努めていく。私どもは、輸入車の発展を通じ、日本経済に貢献してまいりたいと考えている。