理事長会見(2012年7月)

理事長会見 2012年7月25日

日本自動車輸入組合(JAIA)は2012年7月25日(水)、新理事長 ニコラス・スピークスによる会見を開催いたしました。
スピーチの内容は、以下の通りです。

ニコラス・スピークス理事長

 

1. 冒頭挨拶と景気動向

私は、5月25日に開催された第47回通常総会において、当組合の8代目の理事長に選任されました。主に海外ブランドの自動車を取り扱う独立系インポーターの団体として1965年に設立されたJAIAは、今日までに、一部の日本メーカー、またおもに海外メーカーの100%子会社を通じて、ほぼ全ての欧州および米国ブランドを代表するまでに成長しました。私どもは、会員インポーターやそれぞれのパートナー企業と共に、地域社会の一員として、日本経済の発展に大きく貢献することを目的として活動を行っております。
私は、この歴史ある組織の理事長という重責を担うことを大変名誉に思います。皆様にはぜひ、引き続き、輸入車への関心を持ち続けていただき、ご支援下さいますようお願い申し上げます。
私は、理事長として、輸入車業界の発展と、自動車や交通関連技術の先端を行く日本のクルマ社会が抱える諸問題、そして二輪、四輪を含めた自動車市場全体の発展に寄与すべく、最大限の努力を払ってまいりたいと考えています。
当組合の会員各社が販売する四輪車と二輪車は、必ずしも需要によるばかりではなく、日本とは異なる文化と歴史を背景に製造されるものですが、私どもは、日本の自動車ユーザーがそうした輸入車の幅広い選択肢を得られるよう、関係省庁と協力して、働きかけを行ってまいります。
さて、日本経済は、昨年の三重災害から力強く立ち直り、復旧から復興に向かいつつあり、政府発表の経済指標においてもそれは明らかであります。特に、日本の自動車メーカーがこの1年間で素早い生産体制の回復を図り、基幹産業としての役割を見事に果たされたその勇気と回復力、そしてリーダーシップに対して、同じ自動車業界に身を置くものとして、心より敬意を表します。
また、今なお避難生活を余議なくされている多くの方々やご家族には、改めて、心よりお見舞いを申し上げます。日本は、この度の震災を通じて、経済と政治の発展に日本の寄与を必要としている全世界に対して、そのすばらしい資質を明確に示したと思います。
本日は、輸入車の2012年上半期の実績を振り返りながら、今後の展望、また下半期に向けたJAIAの活動に関するトピックについて皆様にお話しさせていただきたいと思います。

2. 2012年上半期の実績

昨年は生産と供給に支障が出た一方で、今年は政府のエコカーに対する支援もあり、軽自動車を含む日本の乗用車市場は、今年の上半期はおよそ56%の増加となりました。また、軽自動車の市場シェアはおよそ34%となっています。
当上半期における輸入車の合計登録台数は、15万台余りとなり、前年同期比で約14%の増加となりましたが、海外ブランドのみの数値で申しますと、約11万8千台、前年同期比24%増と、順調に推移いたしました。とはいえ、これは市場全体の伸び率に比べると半分であり、市場シェアも落ち込む結果となりましたが、それは、輸入車にとって昨年上半期の供給に支障をきたした程度が低かったことを反映するものでもあります。
海外ブランドの登録台数が、上半期において10万台を超えたのは、2008年の約10万6千台以来4年ぶりとなり、数値の上ではリーマンショック以前の水準に戻ったことになります。
このうち、エコカー減税対象モデルは約56%と、半数を超えるまでになり、制度の開始から3年余りが経過し、各メーカーが日本の制度に合わせたモデルを開発、投入した効果が確実に表れております。
また、エコカー補助金の対象は、約60%に達しております。

3. 2012年下半期の展望

昨年の海外ブランド輸入車の登録台数は、4年ぶりに20万台を超え、今年に入ってからもこの基調が継続していることは先に述べたとおりです。その結果、上半期の実績は前年比約24%増となりました。
下半期に向けても、現在の基調を維持、拡大して行けるよう、最大限の努力を払ってまいります。
したがいまして、年間の見通しとしては、海外ブランド輸入車で23万台を超えるものと予想しております。しかし一方では、間もなく予算額が消化されると思われるエコカー補助金終了後の反動に懸念材料があると同時に、市場規模が2010年のままであること、そして長期的には市場が先細っていくという一般的な見方もあり、決して楽観できる状況ではありません。そういった観点では、税制改正を基本とした継続的な市場活性化策が求められます。

4. 消費税率引き上げと自動車関連税制

消費税率の引き上げが先月の衆院可決を経て、いよいよ現実に迫って来ております。私ども自動車業界にとって、これ非常に大きな影響の問題であると認識しており、実際に、1997年4月の引き上げ時には、販売に大きな影響がありました。
ご存知のとおり、日本では自動車購入時に取得税が課税されており、消費税との二重課税となっています。そのほかにも、保有時にかかる税として、自動車税と自動車重量税とがあり、自動車ユーザーはたいへんに重い税負担を強いられ、自動車購入の妨げにもなっています。
私どもは、従来から自動車に係る税の簡素化、低減化を訴えておりますが、消費税率が引き上げられ、複雑かつ過重な現行の自動車税制が継続することは、自動車ユーザーにとって不公平かつ差別的であることから、今まで以上にその簡素化と低減化を求めてまいります。
先般にもこれらの事項を取りまとめた「税制改正要望書」を関係省庁に対し提出いたしました。また今後は、経済産業省等のヒアリングにも出席し、政府に対して直接発言を行い、併せて、自動車税制フォーラム等において、他の関係団体と協調して関係各所への働きかけを積極的に行ってまいります。
JAMAやJADAの主張にJAIAの主張が加わることで、日本のユーザーにとって「公正な扱い」となることを願っております。

5. 構造的課題

これからの日本は、少子高齢化と急速な人口減少という問題を抱えています。これは、あらゆる産業にとって懸念すべきことであり、自動車にとっても例外ではありません。
また、お客様の嗜好はますます多様化しており、個別化に対応できる商品を提供することが求められ、重要になってくると思います。これは、自動車メーカーにとって、安全や環境に対するニーズを満たしながら、お客さま一人ひとりの状況に合わせた価値とサービスを認識できる製品を提供することを意味します。
こうした状況において、当組合は、税制やその他の面で特定の市場セグメントあるいはユーザーグループを優遇することで公正な競争を台無しにすべきではなく、また、軽自動車を含めた自動車全体を差別なく取り扱うべきだと考えております。これは日本政府が引き続き環境にやさしい自動車を支援していることに異議を唱えるものではありません。確かに、それは奨励すべきことでありますが、こうしたインセンティブは特定のサイズやドライブ・トレーン、あるいは排気量に偏るべきではありません。
私どもとしては、公平な競争環境を整えるため、政府が消費税増税を機に、自動車全体の税制を見直すことを期待します。

6. 技術、環境案件への取り組み

JAIAが優先的に取り組む技術的な課題については、(1) 世界統一試験法(WLTP)、(2) 高圧ガス保安法、(3) 国際的な車両認証制度(IWVTA)、(4) リチウムイオン・バッテリーの課題と充電インフラの4点を挙げたいと思います。

(1) 世界統一試験法(WLTP)
世界中の自動車メーカーが優れた環境性能と燃費を併せ持つ次世代自動車を投入しています。私どもインポーターにとっては、日本の法的基準やインフラ整備がこうした革新的テクノロジーの妨げとならないことが重要です。
燃費と排ガスの基準は、私共の商品企画と技術開発に大きく影響します。現在、2020年の燃費基準が三省庁合同の検討会で決定され、その際の世界統一試験法(WLTP)の採用検討が合意されています。
私どもは、行政刷新会議の提言に基づいて行われた、WLTPの採用と国内排ガス規制の統一(2013年)を速やかに検討する旨の閣議決定を歓迎します。できるだけ早期に、そしてスムーズな移行ができるよう要望いたします。

(2) 高圧ガス保安法
海外メーカーが、環境対応のために開発し、既に海外で導入している新技術が、日本にだけ導入できないという事態が発生しています。特に大きな懸案となっているのが、高圧ガス保安法による規制です。
– オゾン層保護と温暖化防止に有効なエアコン用新冷媒
– 燃料電池車の水素タンク
– 水素エアバッグ・インフレーター(2012年9月)
– LPGおよび天然ガス車の燃料タンク
現在、これらの技術や装置が高圧ガス保安法の規制により日本へ導入できない状況となっており、これは、環境に優しい製品を求めるお客様にとっても不幸なことだと思います。
私どもは、これらができるだけ早期に導入されるよう、引き続き政府の対応を求めてまいります。

(3) 国際的な車両認証制度(IWVTA)
国土交通省のイニシアティブにより、昨年11月、自動車基準調和世界フォーラムにおいて国際的な車両認証制度(IWVTA)創設のロードマップが承認されました(2016年3月まで)。
私どもはこの施策を歓迎および支持します。また、日本が、各国独自の要件による例外を極力抑えたIWVTAの早期確立・導入に向けて、関係各国と機密に連携して作業を進めることを望みます。

(4) リチウムイオン・バッテリーの課題
次世代自動車の多くには、従来の内燃機関自動車では使用されていない電池が用いられることになると思います。私どもは、日本政府に対して、関係各国と協力して、電池単体や充電器システムの性能、充電インフラ、輸送時や廃棄時における安全性に関する世界統一基準を促進して行くことを求めます。
また、リチウムイオン・バッテリーの使用が拡大してきており、今後そのリサイクルが問題になるでしょう。しかし、リチウムイオン・バッテリーを搭載したモデルは未だ数えるほどしかなく、輸入車インポーター、また一部の日本メーカーにとって、そのリサイクルの仕組みを独自に構築することは現実的ではありません。私どもは、関係各方面と協力して、環境に対する責任を果たしながら、費用対効果の高い方法でリチウムイオン・バッテリーをリサイクルできるよう取り組んでまいります。

7. 二輪車事業

2010年7月より開始した二輪車事業も、3年目を迎えています。事業開始と同時に組織した「二輪車委員会」(Motorcycle Committee)を中心に活動を行っておりますが、喫緊の課題として、2000年頃より縮小傾向を辿っている小型二輪車市場の活性化があります。
私どもは、自動車工業会(JAMA)の二輪車特別委員会と協力して、具体的には高速道路料金の見直しと、二輪車の運転免許制度の改善を求めてまいります。
また併せて、二輪車の排ガス、騒音規制の強化に対し、国際的な基準調和を踏まえた規制作りを提案し、一方、認証手続きに関する業務の、効率的かつ弾力的な対応が可能な仕組みの検討を、国土交通省のご支援を得て重点的に取り組んでまいります。

8. 東京モーターショーへの共催参加

私どもは昨年の「東京モーターショー2011」に共催団体として参加しましたが、このたび、主催者である自動車工業会(JAMA)と、次回以降についても、同様に共催参加することで合意いたしました。
JAIAの役割は、理事長がモーターショーの副会長に就任し、開会式をはじめ公式行事に参加します。また事前準備のための各種会議に事務局が参加し、ショーの運営に対し、輸入車としての意見を申し入れる機会を得ています。
できるだけ多くの会員会社が参加することで、モーターショーが盛り上がり、日本の自動車市場の活性化にお役に立てればと考えています。

9. 終わりに

最後になりますが、JAIAは、引き続き日本自動車工業会(JAMA)、日本自動車販売協会連合会(JADA)をはじめとする他の自動車関連団体との連携や、経済産業省、国土交通省等政府関係部署との協調を通じて、重要かつ持続可能な日本の自動車市場を維持すべく努めてまいります。