まず、1月1日に起きた令和6年能登半島地震に際し、お亡くなりになった方々に心より哀悼の意を表しますとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。被災地の安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
昨今、カーボンニュートラル実現の機運が高まっているなかで、JAIA会員各社は日本のお客様に、電動車をはじめとした最先端の安全・環境技術を備えた世界各国のバラエティに富んだ輸入車をお届けすることができるよう、技術の発展に伴う新たな課題の解決に向けチャレンジしております。さまざまな魅力を持つ輸入車を日本のお客様にお届けすることを通じて、日本の自動車市場を活性化し、日本の持続可能なモビリティ社会の発展に貢献すべく最大限の努力をして参ります。
2023年の国内自動車市場について、登録台数は約303万台と6年ぶりに前年を上回りました。外国メーカー車の2023年暦年の登録台数につきましても、対前年比2.5%増の248,329台となり、2021年以来2年ぶりに前年を上回りました。
特に輸入EVについては非常に好調であり、昨年7月の会見の際にも皆様に「年間2万台の大台が見えていること」をお伝えしておりましたが、2023年の輸入EVの登録台数は前年比1.6倍の22,890台と2万台を超え、2019年以降5年連続で過去最高の台数を更新致しました。2019年の約1,400台から5年間で約15倍に拡大したことになります。このような実績を残すことが出来たのは、政府による切れ目ない継続的な補助金等の各種支援策や、JAIA会員各社がお客様のニーズにこたえられるよう、積極的にEVのラインナップを拡充した結果と考えています。
輸入EVのラインナップは、2020年には10ブランド・20モデルでしたが、2023年末時点には商用車も含め17ブランド・118モデルにまで拡大していく中で、大型から小型まで、SUVやラグジュアリーモデル、スポーツタイプなど、多種多様なモデルにまで広がりを見せ、ユーザーの選択肢も広がってきています。輸入車がEVのマーケットで積極的な役割を果たしてきたことで、充電インフラやリサイクルといった電動化に関する課題についてJAIAとしても具体的に見えてまいりました。これらの課題については後ほどご説明差し上げます。
2020年から続いた車両供給遅れの影響については、会員インポーター各社により状況は様々ですが、全体として回復基調にあること、加えて、JAIA会員各社により積極的な新型車の導入も予定されていることから、本年も引き続き、輸入車販売は堅調に推移していくと考えております。
具体的にEVを中心にお話をいたしますと、税制優遇に加え、補助金など政府からの支援をいただき、また会員各社が積極的に日本市場へ電動車を投入することでより販売台数が増えていくと想定しております。先ほどご説明した昨年実績においても、外国メーカー車に占めるEVの割合は9.2%にまで拡大しています。外国メーカー車の10台に1台がEVになる日も間近だと考えており、より一層強力に輸入車市場をけん引していく存在になると考えております。
ちょうど明日から3日間、神奈川県の大磯において、JAIA会員合同のメディア向け試乗会を開催致します。この試乗会には毎年各社の最新ラインナップが並びますが、コロナ禍前は1割もなかったEVが、今年は約70台の試乗車のうち、4割がEVであり、PHEVも含めれば5割を超えていることも、外国メーカー車におけるEVの存在感を表しているかと思います。なお、JAIAは2021年以降、電動車イベントの開催などを通じ、電動車の認知向上の取組みを継続して参りました。具体的な内容は後ほどご説明を致しますが、JAIA会員による積極的な参加協力を得て実施した活動を通じ、輸入EVは日本のお客様にかなり浸透してきているとの手ごたえを感じているところであり、その活動を引き続き継続していく方向で検討をしております。
一方、諸外国の脱炭素化に向けた様々な方針、市場動向も十分認識しておりますが、例えばドイツでは2023年のEVのシェアは18.4%にまで拡大している中、日本ではまだ国内全体でも2.2%に留まること、加えて、政府による電動車普及の支援が継続することから、日本はまだまだEVの伸びしろがあると考えております。
こうした状況を踏まえれば、2024年の輸入車市場は堅調に推移し、2年連続で前年実績を上回るものと大いに期待しております。
まず、市場活性化と環境・エネルギー分野に関する活動についてご説明します。最初に、2分野にまたがる活動としてJAIAの電動車の取組みをご紹介します。JAIAでは電動車をさらに広めていくために、①補助金制度等に関する政府への要望活動だけでなく、②電動車普及イベントの開催や③充電電圧等に関する規制緩和の検討といった充電インフラの環境整備、④リチウムイオンバッテリーのリサイクルといった4項目を主軸に事業を進めています。
まずは政府に対し、電動車の購入補助金の施策について、継続的に切れ目なく実施していただき、また2023年度補正予算にて1,291億円という大きな予算を確保いただきありがとうございます。
次に、輸入電動車の認知向上の取り組みをご紹介します。JAIAは2021年より輸入電動車普及促進のプラットフォームとして活動し、昨年は7月の神戸で輸入電動車普及促進イベントを開催したほか、10月26日から開催されたJapan Mobility Show内で、JAIAメンバー各社からも個別の参加がありましたが、JAIA自身としても1997年以来26年ぶりブースを設置致しました。このブースには、電動車のプラットフォームとして、充電インフラ関連企業9社、リサイクル関連企業3社にもご参加を頂きました。2021年から実施してきた輸入電動車普及促進イベントの一環として、電動車に特化したブースを出展し、輸入電動車のプレゼンスの向上だけでなく、充電インフラやバッテリーリサイクルといった電動車の課題を意識した展示を通して、電動車のまわりにある環境について多くの方に知っていただくよい機会になったと考えています。
また、11月に開催された名古屋、12月に開催された大阪と福岡、1月に開催された札幌のモビリティショーにJAIAは主催・後援をしました。今後も各地域との連携を強化してまいります。
JAIAは2024年度も輸入電動車普及促進イベントを継続開催する方向で検討を進めております。昨年に引き続き一般の皆様に輸入電動車の魅力を理解して頂くとともに、カーボンニュートラルを実現するための重要な課題である電動化に向け充電インフラをはじめとした社会システムを意識した形でのイベントを検討しております。
2050年カーボンニュートラルに向け、電動車を取り巻く充電を含めて新たな社会システムの整備を中長期的にしていくことが肝要であると考えています。JAIAは会員インポーターとともに電動化の将来を見据えた活動を推進してまいります。
続いて、充電電圧等に関する規制緩和の検討といった充電インフラの環境整備についてお話します。JAIAは充電インフラに関して基礎充電・経路充電・目的地充電における大容量化とともに、質と量を含めた更なる充電インフラの拡充が必要と考えております。
電動車の普及のためには、誰にでも使いやすい充電インフラの充足が必要です。
JAIAは充電インフラに関しては重要な課題として位置づけており、昨今、充電インフラに関して幅広い課題に対応するため、JAIA内に横断的なチームを立ち上げて検討を進めてまいりました。2023年6月に経済産業省が主導で立ち上がった「充電インフラ整備促進に関する検討会」においてはJAIAとして、①普通充電器の高出力化、②高電圧化・急速充電、③高速道路関係を中心に要望した結果、10月に策定された「2030年に向けた充電インフラのロードマップ」に、これらを反映して頂きました。現在対応に向け迅速に動いていただいており、経済産業省をはじめ関係機関の皆様には感謝申し上げます。10kWまでの普通充電器への補助金適用に向けたJARI認証や高電圧に関する規制の緩和などに向けた議論が関係者によって進められているなど、重要な課題が解決に向けて動き出したところであり、JAIAとしてもこれらの課題解決に向け努力していきたいと思います。
特に現在、日本の電圧規制によって、欧米並みの高電圧充電ができない状況にあり、欧州で開発された車のなかには、低い充電電圧を車両の高電圧バッテリーに合わせるため、日本市場のためだけに電圧変換器を開発して搭載しなければならないという事実もあり、コストのほか搭載場所の問題など、開発上大きな課題となっています。
高速道路上の充電インフラについては、質・量とも充実し、高電圧化を含め速く充電ができるようになること、また、高速道路施設の近くにある充電インフラを利用するため、充電事業者の負担が少なくなる方法で高速道路からの一時退出の制度化について関係者の検討が進むことを期待しています。
なお、高電圧化を考えていくうえで諸外国の動きも注視しているところです。欧州委員会によると、欧州には2023年末の時点で既に、約77,000基の急速充電器が設置されており、この半数以上は1,000Vで充電でき、150kW以上を出力することが可能です。たとえばドイツでは、街中にこのような高電圧の急速充電器が設置されており、誰でも簡単に利用することができます。日本もドイツのように、誰もがどこでも高電圧で急速充電できるようになると、充電時間も短くなり、ユーザーが求めている短時間での充電が可能になってきます。
併せて東京都の事例にみられるような公共駐車場や集合住宅への充電器設置を促進するための環境づくりが必要で、東京都のみならず地方へ展開されることが重要です。既存の集合住宅や機械式駐車場等への充電器整備が進むよう関係者のご支援をお願いしてまいります。
リサイクル分野では、昨年初めより活動している「廃リチウムイオン電池のリユースとリサイクルに関するタスクフォース」において、欧州電池規則などの海外情報や日本政府の動きなど国内情報を収集するだけでなく、電池リサイクル事業者やリサイクル業界団体と意見交換を実施し、リサイクル技術の実態を理解することができました。また、欧州では欧州電池規則に沿い、各社がバッテリーリサイクルやリユースに向けたプラントの設置などを進めているところです。今後も、メンバーや関係業界団体と意見交換をより進め、会員インポーター各社が業界の最新情報を随時把握し、リチウムイオン電池のリサイクル・リユースに適切に対応できるよう引き続きサポートしてまいります。
続きまして、電動車以外の取り組みもご説明いたします。まず、税制改正要望については、今年もJAIAとしては引き続き過重な自動車関係諸税の負担の更なる軽減と税制の簡素化・公平化を求める要望活動を進めて参ります。特にこれからカーボンニュートラル実現に貢献する電動車の普及を加速する必要がある中で、ユーザーの負担増につながる制度改正は避けるべきであり、EV、PHEV、FCVなど電動車の普及を加速させるための税制改正の検討を政府に対してお願いしていきます。
環境・エネルギー分野において、乗用車の2030年度燃費基準は2020年度基準に比べ、平均燃費ベースで44.3%の大幅な改善が必要となりますが、実燃費を向上させる省エネ技術を評価して、その普及を促すオフサイクルクレジットといった柔軟的措置の導入をJAIAとして要望してまいります。
次に、JAIA会員各社が、日々進歩する技術に対応した先進的な自動車をスムーズに日本市場に投入できるように実施している安全と基準の調和に関する活動についてご説明します。
まず、安全・環境性能を確保した輸入車を日本の消費者へ追加コスト等をかけずに提供していくため、関係当局とともに、国際的な基準の整合、さらに認証制度について国連の1958年協定に基づく相互承認制度が活用できるよう長年活動して参りました。この結果、車両全体の国際的な車両型式認証制度であるIWVTAが2018年に成立しています。
その後もIWVTAは、排ガス・燃費・電費に係るUN-R154が追加される等年々拡充され、乗用車に関する主要な安全・環境関係装置型式認定を包含する形のIWVTAの取得ができるようになりました。JAIAでは引き続き、JASIC活動等を通じて、車両法規の国際的な調和がより一層推進され、より完成された利用価値の高いIWVTAがより早く実現するべく活動して参ります。
また、その他個別装置に係る基準についても、実際に車両が路上を走行したときの排出ガス規制であるRDE規制にかかる国連の新規則(UN-R168)が3月には発効される予定になる等、車両基準の国際調和が年々着実に進んでおり、JAIAとして歓迎しているところです。JAIAとしては、引き続き残された日本の独自要件が国際調和等により解消されるべく活動して参ります。
さらに、車両の基準適合性確認に係る認証手続きにつきましては、昨年11月にJAIAよりIWVTAの申請手続きを基本とする車両認証の申請手続きの一層の合理化・効率化を国土交通省へ要望したところです。JAIAとしては、輸入車両の安全・環境保護性能を担保しながら、さらなる手続きの合理化が進むことを期待しているところです。
その他、近年のトレンドであるコネクテッドカー等の車両安全確保のために、車載システムのサイバーセキュリティ/ソフトウエア・アップデートに係る新たな規制に対しても、適宜本国OEMや国土交通省とも連携しながら、メンバーが適切に対応できるように活動して参ります。
また、JAIAは通信分野における、近い将来の自動運転実現などに向けた技術動向は非常に重要であると考えており、専門のワーキンググループを立ち上げて議論を進めながら、周波数や通信方式などについて関係機関と協議を進めてまいります。
自動運転技術については、モビリティDX検討会などの情報収集を継続いたします。このような取組みを進めながら、お客様により高い安全性と利便性を提供できるよう貢献して参ります。
つづきまして、自動車公正取引・アフターセールス分野等の活動についてご説明します。
自動車公正取引に関しては、JAIAは自動車公正取引協議会の作業部会に積極的に参加し、JAIA会員への自動車公正競争規約の周知徹底及び、公正な取引の確保を目指した活動を引き続き進めて参ります。
アフターセールス分野においては、2025年10月以降型式指定を受けた輸入車にも適用が予定されている車載式故障診断(OBD)システムを活用した電子的な車両検査制度(OBD検査制度)への対応に向けた準備、さらには法令を遵守したリコール関連手続きの実施等、メンバー各社が適切に対応できるよう対処して参ります。
また、昨今、自動車産業共通の課題として整備人材の不足が喫緊の課題となっております。JAIAとしても、おととし9月に自動車整備人材関連情報連絡会を設置し、課題克服に向けて各種情報の共有やメンバー各社と具体的な活動を続けて参りました。国でも昨年度よりワーキンググループを立ち上げて取り組んでいるこの課題の背景は自動車整備に限らず少子化社会である事に加え、若者の車離れに起因するという現実をまずは受け止めなければなりません。連絡会での活動の結果、メンバーにおいても連絡会を通じて共有した情報や活動をベースに個社ごとの取組みも少しずつではありますが進展して参りました。
活動方針の一つとして、JAIAで開催してきた輸入電動車普及促進イベントの開催時においても、自動車整備士養成学校等とメンバー各社との連携の強化を目的として、学校とメンバー・傘下販売店との懇談会を開催して参りました。
これまでにいただいた養成学校からのご要望なども踏まえ、各インポーターが養成学校と連携した活動を行い、養成学校の学生をはじめ中高生などが車両に直接触れることが出来る機会を提供するなど、「輸入自動車へ興味を持つ若者を増やしていく」という視点から、メンバーの活動をより活発にできるようJAIAは今後も支援をしてまいります。また、外国人材の採用・定着についてもJAIAは会員インポーターをサポートしていきます。
その他、若者に輸入車整備の魅力を理解して頂けるよう、来月にはJAIAのWebサイト内に、四輪と二輪のメンバー各社の輸入車整備の魅力を訴求するWebサイトにつながる特設ページを設け、輸入車整備の魅力をPRする活動も順次、拡大しながら進めて参りたいと思っております。
最後に、主要活動の第5の柱であるモーターサイクルに関する活動についてご紹介いたします。
2023年の輸入小型二輪車の新規登録台数は、前年の26,271台と比べ27,008台と2.8%増加し、5年連続の増加となりました。理由として、二輪車がコロナ禍の影響で密を避ける移動手段になったことに加え、密を避け一人で楽しめるツーリングキャンプ等が定着したことが挙げられます。また、SNS等の普及により、バイクに関する動画が発信されることで今まで影を潜めていたバイクを趣味とする著名人がテレビでも流れるようになり、バイクがより身近な存在へと変わりつつあります。更に、中型自動二輪免許でも乗ることのできる新型車が登場するなど、多種・多様かつ個性的な輸入二輪車に目を向けて頂いたからだと考えています。
さて、二輪活動の大きな柱の一つは「市場活性化のための活動」です。その一つとして昨年も実施をした大磯ロングビーチでの輸入二輪車試乗会を今年も4月10日・11日に開催いたしますので、ぜひお越しください。
また、4月5日~7日には愛知県国際展示場にて第3回名古屋モーターサイクルショーが開催される予定です。名古屋モーターサイクルショーでは、高校生以下と女性の入場料を無料にし、モーターサイクルのすそ野を広げる工夫をしています。JAIAは昨年度このイベントを後援しましたが、今後も主要都市において同様な企画に積極的に参加してまいります。
加えて、2023年9月8日、JAIAをはじめとする二輪関係8団体と経済産業省は、静岡県浜松市にて「第11回バイク・ラブ・フォーラム in 静岡・浜松」を開催しました。パネルディスカッションでは、「これから求められる若年層の交通安全教育」をテーマに法令順守の重要性と高校生年代での安全運転教育の必要性について討議されるなど、若年層の需要の高まりに着目した内容となりました。2024年は9月27日に宮崎県で開催される予定です。
JAIAは、二輪車について高速道路料金の独立化や二輪駐車場の拡充、また二輪免許制度の見直しを要望しています。バイク・ラブ・フォーラム等を軸として他団体と連携しながら、政府・各政党のオートバイ関連のプロジェクトチーム検討会の場などにおいて高速道路料金区分の独立化と料金適正化に向けた要望活動を実施致しました。この結果、2023年4月よりNEXCO東日本などの道路事業者により、土日・祝日に高速道路を利用するETCを装着した二輪車を対象に、料金を定率で割り引く「二輪車定率割引」が、2022年に続き昨年も実施されました。
二輪活動のもう一つの柱である「規制の国際調和を図るための活動」に関しましては、継続して会員インポーターのサポートを行います。
本年もJAIA二輪試乗会等を通じ、多種多様かつ個性的な「魅力ある輸入二輪車」を発信することで、更なる輸入モーターサイクルの普及と国内二輪市場の活性化に取り組んでまいります。
JAIA会員各社は引き続き、環境・安全性能に優れた魅力ある輸入車のご提供を続けると共に、JAIAは日本政府や自動車産業及び販売市場に関わる全ての組織と協力して、ユーザー負担を軽減するとともにカーボンニュートラル社会の実現に貢献して参ります。