2023年1月 理事長会見

理事長会見 2023年1月30日

上野金太郎理事長

1.冒頭挨拶

JAIAの理事長を拝命するのは2013年、2018年に続き3度目となります。特にカーボンニュートラル実現の機運が高まっているなかで、JAIA会員各社が日本のお客様に、電動車をはじめとした最先端の安全・環境技術を備えた世界各国のバラエティに富んだ輸入車をお届けすることができるよう、技術の発展に伴う新たな課題の解決に向けチャレンジしてまいります。一方で、昨年からのウクライナ情勢や半導体不足等により自動車の供給に影響が続き、お客様にご迷惑をおかけしているなかでの就任となり、その責任に改めて身が引き締まる思いであります。

自動車業界も物価上昇や供給面の制約という課題に直面していますが、さまざまな魅力を持つ輸入車を日本のお客様にお届けすることを通じて、日本の自動車市場を活性化し、日本の持続可能なモビリティ社会の発展に貢献すべく最大限の努力をして参ります。つきましては、政府におかれましても引き続きのご支援を期待しております。

2.2022年の輸入車販売実績の振り返り

昨年の国内自動車市場は、半導体不足やそのほか部品供給の遅れの影響もあり、登録車全体の販売台数も減少し約256万台となりました。外国メーカー車の販売台数も1月から9月まで厳しい状況が続き、10月以降は回復の兆しを見せたものの、2022年の販売台数の合計は前年比6.7%減の242,226台となりました。ただし、登録車全体に占める外国メーカー車のシェアは9.5%と1988年の統計開始以来最高でした。

なかでも2022年は、輸入EVの販売台数が14,341台と初めて1万台を超えるという記念すべき年だったのではないかと思います。これは、補助金施策やメンバー各社がお客様のニーズにこたえられるようEVのラインナップを15ブランド78モデルまで拡充した結果と考えております。2021年の輸入EVの販売台数8,610台と比較して66.6%増となり、日本で販売された乗用EVの45.3%を輸入車が占める結果となりました。

3.2023年の輸入車販売展望

2023年度税制改正大綱にて、現下の情勢に鑑みエコカー減税・環境性能割については2023年末まで、EV等についても現行の優遇が今後3年間それぞれ据え置かれること等が発表されました。この施策はJAIA含め業界の要望を聞き入れていただいたものであり歓迎しています。

また、国内の消費動向を幅広い視点でみると、一例ですが全国旅行支援等も影響し旅行に対する高い消費動向をうかがうことができ、輸入車業界としては、この消費動向は追い風になると考えています。

特に電動車は、補助金や税金優遇など電動車に対する政府からの支援をいただき、また会員各社が積極的に日本市場へ電動車を投入することでより販売台数が増えていくと期待しています。例えば、ドイツでは2017年に全体におけるEV・PHEVの販売比率が1%台だったものが、政府による補助金施策や電動車のラインナップの増加により2021年には26%まで伸びていますので、日本市場においてはまだまだ伸びしろがあると思っています。

JAIAとしては、航続距離が伸びてきているといったEVの魅力をお客さまにお伝えし、幅広いラインナップをお客様に提供するとともに、イベント等も実施してお客さまにより身近なものとしてEVを感じていただくよう努めてまいります。
あらゆるラインアップに対して幅広く、また切れ目ない形で継続的な購入補助金等をいただく等、政府のご支援をいただきながら、電動車を取り巻く充電を含めた環境を整備していくことが肝要であると考えています。

EVの販売が今後着実に伸びることによって輸入車市場がさらに活性化され、輸入車全体の販売台数がコロナ禍前の水準にさらに近づくことを期待しています。

4.JAIAの主要活動

●市場活性化に関する活動、環境・エネルギー分野に関する活動

まず、市場活性化と環境・エネルギー分野に関する活動についてご説明します。最初に、2分野にまたがる活動としてJAIAの電動車の取組みをご紹介します。

まずは政府に対し、電動車の購入補助金の施策について、継続的に切れ目なく実施していただきありがとうございます。先ほども述べましたが、この補助金のおかげで輸入EVの販売が14,341台と初めて1万台を突破しました。

このような状況の中、2021年より輸入電動車普及促進のプラットフォームとして活動し、11月にもメディアの皆様に輸入電動車の魅力を体験頂くため、四輪11ブランド31台が出展し「輸入電動車試乗会」を開催しました。また、この試乗会には、3社4ブランドの二輪の展示や充電インフラ関係企業や自治体にブース参加をいただき、さらには自動車整備士を育てる自動車大学校と会員・販売店の懇談会も実施して、電動化に関する課題を意識したイベントを実施しました。今年も、新たな手法も取り入れた形で電動車の認知向上や電動化に関する課題を意識したイベントの実施を検討していきます。

また、電動車の普及の為には、誰にでも使いやすい充電インフラの充足が不可欠です。自動車販売店を含む商業施設に設置する充電器補助に関する支援策の更なる充実、集合 住宅及び一戸建て住宅への基礎充電設備とそれを補うための住宅地周辺の公共充電施設を充実、公道への充電器の設置促進の支援等を関係機関にお願いしております。

さらに、技術進歩に対応した形で、急速充電器による充電時間の短縮に向けて充電電圧等にかかる課題に関する規制緩和の検討など、充電インフラの環境整備も併せてお願いしていきます。日本の制度が諸外国の制度と異なるため、JAIAとしてはタスクフォースを中心に関係省庁とも連携を進めながらこの課題の解決に向けて取り組んでいきます。

リサイクル分野では、会員各社が適切に車載用蓄電池の回収に対応できるようサポートしてまいります。JAIAではリチウムイオン電池関係のリサイクル・リユースについての タスクフォースを年初に立ち上げ、欧州電池規則などの海外の情報、日本政府の動きなど国内情報も参考にしながら適切な蓄電池リサイクル・リユースに向けた検討を進めてまいります。

続きまして、税制改正要望については、今年もJAIAとしては引き続き過重な自動車関係諸税の負担の更なる軽減と税制の簡素化・公平化を求める要望活動を進めて参ります。特に日本市場における電動車普及が十分に軌道に乗り、カーボンニュートラル政策に則り諸外国と同等のレベルに達するまでは、すべての電動車が税制の優遇を受けられるよう、政府に対して政策的支援を継続いただきますようお願いしていきます。

また、市場活性化の取組みとしまして、電動車だけでなく輸入車の魅力をさらに体感いただける、恒例の「第42回輸入車試乗会」を明日から開催いたします。ぜひお越しください。

環境・エネルギー分野の電動車以外の取組みについてもご説明いたします。乗用車燃費基準は乗用車の2030年度燃費基準は2020年度基準に比べ、平均燃費ベースで44.3%の大幅な改善が必要となりますが、実燃費を向上させる省エネ技術を評価して、その普及を促すオフサイクルクレジットといった柔軟的措置の導入をJAIAとして要望してまいります。

●安全と基準の調和に関する活動

次に、JAIA会員各社が、日々進歩する技術に対応した先進的な自動車をスムーズに日本市場に投入できるように実施している安全と基準の調和に関する活動についてご説明します。

まず、安全・環境性能を確保した輸入車を日本の消費者へ追加コスト等をかけずに提供していくため、関係当局とともに、国際的な基準の整合、さらに認証制度について国連の1958年協定に基づく相互承認制度が活用できるよう長年活動して参りました。この結果、車両全体の国際的な車両型式認証制度であるIWVTAが2018年に成立しています。

既にIWVTAの対象装置であった安全関係等の装置に加え、2022年にはJAIAの要望事項であった排出ガス・燃費/電費に係るUN-R154がIWVTAの要素に追加され、乗用車に関する完全なIWVTAの実現に大きく一歩近づきました。JAIAでは引き続き、車両法規の国際的な基準調和をより一層推進する等の活動を通して、完成度の高いIWVTAの実現に向けて活動して参ります。

その他の安全技術面では、2022年11月に開催されたWP29(自動車基準調和世界フォーラム)において、日本独自基準であった直前直左視界要件を代替する新UN法規案が合意され、2023年6月には成立の見込みとなりました。JAIAとしてはJASIC活動等を通じて国際基準調和等により、残された日本の独自基準が解消されるように、必要に応じJAIAへの支援を政府に要望する等の活動を継続して参ります。その他、会員各社は交差点対応等の高性能なAEBSや車線維持/逸脱防止装置、高機能な前照灯等の搭載車種を順次拡大して参ります。

さらに、2023年7月より、コネクテッドカー等の車両安全確保のために今後ますます重要となる車載システムのサイバーセキュリティ(CS)/ソフトウエア・アップデート(SU)の法規が輸入車にも本格的に適用となる予定で、国土交通省との対話等を通して 新たなCS/SU規制への合理的で効率的な運用を目指し活動して参ります。メンバー各社は、各OEMとも連携し、適切にこれらの新規制に対応して参る所存です。

また、2021年にJAIA内に通信分野に関するTFを設置して自動車内外に実装される電気通信設備や通信インフラの動向の把握に努めています。2022年度から補助金に追加された高度安全運転支援技術に係る要素技術については、その対象範囲を拡大し、同じ目的を実現するための先進技術に対して広く補助金が適用されることを要望すると同時に、輸入車が持つさまざまな技術についてMETIとも情報共有・連携を図ってまいります。

自動運転技術については、自動走行ビジネス検討会やSIP-adus及びその後継プログラムの情報収集を継続します。

このような取組みを進めながら、お客様により高い安全性と利便性を提供できるよう貢献して参りたいと考えています。

●自動車公正取引・アフターセールス分野等の活動

つづきまして、自動車公正取引・アフターセールス分野等の活動についてご説明します。

自動車公正取引に関しては、JAIAは自動車公正取引協議会の作業部会に積極的に参加し、JAIA会員への自動車公正競争規約の周知徹底及び、公正な取引の確保を目指した活動を引き続き進めて参ります。

アフターセールス分野においても、JAIAは、今年1月から導入された電子的車検証やコネクテッド技術の発展に伴う新たな動き、車載式故障診断装置を活用した車両検査制度、さらにはリコール関連手続き等、メンバー各社が法令を遵守し、適切に対応するよう対処して参ります。

また、昨今、自動車産業共有の課題として、整備人材の不足がさらに喫緊の課題となっております。JAIAとしても昨年9月、自動車整備人材関連情報連絡会を設置し、”国への制度面における働きかけ”、”JAIA会員・販売店と自動車専門学校・大学校との連携”、”販売店等におけるベストプラクティスの共有”、”外国人人材の活用検討”、”整備工場関連等の補助金などの制度活用への情報提供”、という5つの活動領域を設定し具体的な活動を開始しました。

昨年11月25日に実施した電動車試乗会では、自動車大学校とメンバー各社との連携の強化として、先に述べたような学校と会員・販売店との懇親会だけでなく、大学校の先生方・学生のみなさまがインポーターから最新の電動車の魅力について直接説明を聞いていただく機会も設けました。また、先生方から「車両を実際に見たことで、学生が就職先の具体的な話をするようになった」とご好評をいただきました。

先ほどの5つの活動領域をお話ししましたが、今後はより具体的に活動してまいります。連絡会メンバーからも、例えば外国人人材活用の検討をさらに前に進めたいという意見も出てきており、現状や各種制度も把握しながら、整備人材の確保・定着につながる活動を進めたいと思っています。

●モーターサイクルの活動

最後に、モーターサイクルに関する活動についてご紹介致します。

はじめに、本年、JAIA二輪の新たな会員に「ピーシーアイ」様を迎えました。JAIA 二輪は、2010年に会員5社からスタートし、2023年となる今年は12社となりました。

さて、輸入小型二輪車のマーケットですが、2022年の新規登録台数は26,271台で2021年の23,073台と比べ13.9%増となり4年連続のプラスとなりました。これは現在も続くコロナ禍の影響を受け、「3密を回避した移動手段」として、更に「密に成らない遊び方」として趣味性が高く、多種・多様且つ個性的な輸入二輪車に目を向けて頂いたからだと考えています。また、本年も趣味性の高い車両や新型車等を中心に堅調に推移すると期待しています。

続きまして、次は二輪活動についてご説明いたします。大きな二本柱の一本目は「市場活性化のための活動」です。まず、輸入二輪車のPRについて、昨年4月、第7回輸入二輪車試乗会を開催いたしました。安全面の対策はもちろんのこと、コロナ禍の影響を最大限に配慮した対策も講じながら、10社88台の輸入二輪車の魅力をお伝えすることができました。本年も昨年同様、4月に試乗会を開催する予定ですので、ご来場を心よりお待ちしております。また、昨年6月開催のJAIA 輸入電動車普及促進イベント in 大阪や11月に東京で開催されたJAIA輸入電動車試乗会にEV二輪を展示いたしました。四輪だけでなく、EV二輪も併せてPRを実施することができました。

さらには、JAIAが後援名義を付与した昨年4 月に第1 回名古屋モーターサイクルショーが開催され、JAIA 二輪会員7 社も出展しました。JAIAは今後も主要都市において同様な企画に積極的に参加し、カーボンニュートラルへの取り組みも進めてまいります。

続いて、二輪車の政策について、JAIAはBLF(バイクラブフォーラム)を通じ他の関係団体と協力して各種要望活動を推進しています。主な要望活動は、①高速道路料金の引き下げ、②免許制度の合理化、③二輪車駐車場の整備と拡充の3点です。

はじめに、高速道路料金の引き下げについて、高速道路料金区分の独立化と料金適正化に向けた対応として、2017年から実施されている定額割引の「ツーリングプラン」に加え、2022年には走行距離が100㎞を超えた場合、料金を定率で割り引く「二輪車の定率割引」が初めて実施されました。定率割引が実施されたことは歓迎していますが、定率割引は期間や条件が限定されていたため、二輪車業界の一員として今後も恒久的な高速料金の引き下げを求めてまいります。

さらに、二輪車駐車場拡充に向けた要望活動に関しては、昨年3月、警察庁より駐車場の整備および二輪車等に配意した駐車規制の見直しの推進にかかる通達が発出されました。また、東京都においても国際フォーラム等に二輪車駐車場を設置するなどの動きが始まっており歓迎しています。JAIAとしては今後も他団体と連携しながら、二輪の駐車場環境について引き続き要望して参ります。

二輪活動のもう一つの柱である「環境規制の国際基準調和及び認証制度の効率化を図るための活動」に関しまして、例えば電動二輪車の加速騒音の測定方法の改善など、情報収集を続けながら解決に向けて努力した結果、関係省庁のご尽力もあり解決につながりました。これにより、日本市場への電動二輪車の導入進展につながることが期待されます。

本年も、JAIA二輪試乗会や名古屋モーターサイクルショー等を通じ、多種多様且つ個性的な「魅力ある輸入二輪車」を発信することで、更なる輸入モーターサイクルの普及と国内二輪市場の活性化に取り組んでまいります。

5.結び

JAIA会員各社は引き続き、環境・安全性能に優れた魅力ある輸入車のご提供を続けると共に、JAIAは日本政府や自動車産業及び販売市場に関わる全ての組織と協力して、ユーザー負担を軽減するとともにカーボンニュートラル社会の実現に貢献して参ります。