インタビュートップ > Vol.9 フォルクスワーゲン グループ ジャパン 株式会社 代表取締役社長 庄司 茂

フォルクスワーゲン グループ ジャパン 株式会社 代表取締役社長 庄司 茂

15年連続で「輸入車ブランド別販売台数No.1」を達成、日本人にもっとも身近な輸入車ブランドがフォルクスワーゲンだ。その歴史は、1953年にヤナセ自動車(現:ヤナセ)が108台のフォルクスワーゲン(ビートル、トランスポーター)を正規輸入したことに端を発する。日本初上陸から60年を超え、「さらに日本人に愛されるブランドへ」と話すフォルクスワーゲン グループ ジャパンの庄司氏に話を伺う。

もう少し輪郭のはっきりした“ブランド”に。

F 庄司さんが社長になられて3年近くになりますが、これから何か新しい展開は考えられていますでしょうか?

庄司 もう少しフォルクスワーゲンそのもののブランドを際立たせ、皆さんにイメージを強く持っていただきたいと思っています。

F いまでも十分いいイメージだと思いますが。

庄司 先ほどの話じゃないですが、フォルクスワーゲンよりもビートルやゴルフが有名なわけです。同級生に例えると、「あいつって、いいやつだったと思うけど、でもどんな顔していたんだっけ?」みたいな、いい印象はあるけど、輪郭がはっきりしていない。決してエッジを効かせたいとかそういうわけじゃありませんが、少しイメージチェンジを図っていきたい。

F それは何か大々的なプロモーションなどをされるわけですか?

庄司 プロモーションもそうですし、例えば初めてディーラーの女性スタッフユニフォームを全国統一にします。全国のディーラーから選ばれた12名の女性社員のプロジェクトチームによって現場の意見や要望がきちんと反映されています。ファッションデザイナーの江角泰俊さんによるオリジナルデザインで、シンプルで一貫したフォルクスワーゲンブランドの世界観をお客さまにお伝えするものです。こうしたことをはじめ、接客の仕方やこまかなことを1つ1つ地道にやっていくつもりです。

F たしかに名前は知っているけど、フォルクスワーゲンってどんなやつなんだと問われたら、答えづらいかもしれない(笑)。フォルクスワーゲンのアイデンティティとは、どういうものなんでしょうか?

庄司 今回、これは社内向けのものですが、フォルクスワーゲンとは“愛嬌のある天才”だと、仮の人格を設定しました。天才と言うのは少し大げさかもしれませんが、計算しつくされたクルマを作る一方で、ブランドのパーソナリティとしては昔のビートルに代表されるように愛嬌があるという意味です。

F アインシュタインみたいなものでしょうか?

庄司 いえ、そんなにクールじゃなくて、商品は考え尽くされているけれど、とても愛嬌があるよと。だからコマーシャルも接客も愛嬌のある振る舞いにしましょうと、いま社内でもコミュニケーションしています。

そして、今年4月には、新しいブランドスローガンである「ゴキゲン♪ワーゲン」を掲げてコミュニケーション活動をスタートしました。日本ではブランド名称である“フォルクスワーゲン”を略して“ワーゲン”と呼ばれることがありますが、ワーゲンとはドイツ語でクルマを意味する言葉で、本国ではそのような略称を用いることはありません。したがって、これまでそう略すことは社内ではタブーとされてきたんです。

F それ、よく本社も許してくれましたね。

庄司 もちろん、反対されましたよ(笑)。最初は「何を言っているんだ!」と怒られました。でも日本では一般的に使用されている“ワーゲン”の名をあえて使うことで、よりブランドへの親しみやすさを感じてもらおうと。日本市場にあった独自のやり方で進めさせて欲しいと粘り強く交渉したわけです。

F しっかりと15年連続ナンバーワンという結果を残しているわけで、本社も最後はうんと言わざるをえないと。さすがです(笑)。ところで、いま日本で売っているフォルクスワーゲンは何車種あるんでしょうか?

庄司 いまは14車種ですね。これも先ほどお話したパサートのディーゼルなどを皮切りにこれから5年でもっと増えます。

F 輸入車を敬遠している人ってまだどこかで、「輸入車って壊れるよね」と思っているところがあるように思うのですが、その点についてはどう思われますか?

庄司 もう、そんなことぜんぜんありません。昔はたしかにそういう面もあったかもしれませんが、フォルクスワーゲンの社内データをみると、この5年で納車後12ヶ月以内に壊れる確率が3分の1にまで減少している。

F へえ~この5年でそんなに減っているのですか!

庄司 国民性の違いもあると思います。日本人の場合は、とにかく壊れないということが一番大事だったりする。一方で欧州の場合は、必ずしもそれが一番じゃない。時にハイテクノロジーなものを選択します。

たとえばDSGとCVTを比べたときに、どっちがいいのかと言えば、日本流に言えば壊れないCVTが高品質ということになる。一方でドイツでは高効率で性能がいいものを選ぶ。たしかにDSGには導入初期には故障もありました。しかし、それを自分のものにしていくためにも先進的なものを積極的に取り入れていく。天才的なクルマというものはそうして培われていくものだと思うのです。

F なるほど。たしかにDSGの進化は新しいモデルに乗るたび感じます。一方でゴルフなどにもマニュアルの設定がなくなってしまったことにはちょっと寂しさを感じますね。

庄司 たしかにお客さまからそういう声をいただくこともありました。そこで先ほどの「ゴキゲン♪ワーゲン」キャンペーンの一環として、6年ぶりにマニュアルモデルを復活させました。

F おぉ~。それは素晴らしい。どのモデルに設定されたのですか?

庄司 ポロGTI、ゴルフGTI、ゴルフRの3モデルです。いずれも自社製のユニークな3軸構造を持つ6速マニュアルで、自ら運転する歓びを味わっていただけます。

F いいですねえ、次はぜひup!にもマニュアルを導入してください。

庄司 実は同じタイミングで、マニュアルは導入できませんでしたが(笑)、up!も進化しています。アイドリングストップ機能やブレーキエネルギー回生システムを搭載して、(JC08モード)燃費は25.9km/Lになりました。これはフォルクスワーゲンとして過去一番の低燃費です。

F それはすごい。up!に試乗したときに、アイドルストップがあればいいなと思っていたんです。ところで、これからフォルクスワーゲン グループ ジャパンとしては、何を目指されるのでしょうか?やはり16年連続に向けて販売台数を増やすということが第一の目標でしょうか。

庄司 台数を増やすとともに店舗数を増やしていきます。いま250店舗ありますが、これも今後3年間で83店舗をオープンし、2018年には333店舗体制にする予定です。今年9月には神奈川県の元住吉に直営店もオープンする予定です。

F なるほど、販売店の数も一気に増えるんですね。地方のカバー率も高いから、輸入車がどんどん身近な存在になっていきますね。地方でもフォルクスワーゲンなら、「あんな派手な輸入車に乗って」って後ろ指さされなくてすみそうだし(笑)。

庄司 最近は地方でも学校の先生や公務員の方にも乗っていただいてます。これからもう少しブランドの輪郭をはっきりさせる一方で、でも安心して乗れる輸入車であるという位置づけは、失っちゃいけない部分だと思っています。

F 嫌味なく日本中で愛される輸入車ブランドに、本当の意味でフォルクスワーゲンが“ワーゲン”になる、ということですね。期待しています。

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インタビュアー:フェルディナント・ヤマグチ
コラムニスト。半導体・電子部品専門のマーケット・アナリストとしての顔をもつ一方で、コラムニストとしても活躍。「日経ビジネスオンライン」、「Tarzan」、「cakes」等に連載をもつ。トライアスロンを趣味とし、圧倒的なバイタリティでプライベートと仕事を両立。仕事の関係上誌面への顔出しはNGでマスクがトレードマークになっている。

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