2022年1月 理事長会見

理事長会見 2022年1月28日

pic_about_Christian Wiedmann
クリスチャン・ヴィードマン理事長
 

1.冒頭挨拶

目下、自動車産業は、電動化を始めとするCASEによる大変革期を迎えております。更には、カーボンニュートラルの潮流によって、変革が一層加速しており、JAIAはそれらに対応する為に努力を結集し、関係業界との連携を強化して参ります。理事長としてその重責を自覚しつつ、1つのチームとしてのJAIAをリードし、共通の目標に向かって全身全霊で取り組んで参る所存です。

さて、ご承知の様に、昨年も新型コロナウィルス感染症により、人々の生活および経済活動での混乱が続きました。世界での感染拡大の鎮静化は道半ばであり、新たな変異株の出現も依然として懸念されます。
この状況が1日でも早く回復致します様、また、日本へのビジネス目的での入国が一日でも早く以前と同じ様になりますことを心から願っております。

この困難を皆で克服する為に我々自動車産業界を含め、多くの方々が引き続き、絶え間ない多大な努力を続けております。政府におかれましても引き続きのご支援を期待しております。

2.2021年の輸入車販売実績

2021年前半の外国メーカー四輪車の販売実績は回復の傾向が見えてきておりました。
その要因と致しましては、前年の新型コロナウィルス感染症拡大による落ち込みからの反動増もありますが、コロナ禍での、より安全な移動手段としてのマイカーへのシフト、それに伴うセカンドカー需要や、各社主力量販モデルの新型車や限定車が導入されたことが挙げられ、3月~8月まで6か月連続で前年実績を上回りました。
 
9月以降は、世界的な半導体不足やコロナ禍による部品供給の停滞による自動車生産の減少が影響し、前年同月比マイナスが続き、受注が順調にも関わらず、供給には至らなかったため新規登録台数の実績に大きな影響が出ました。
 
一方、アウトドア需要なども追い風にSUVモデルの販売が昨年に引き続き好調であり、外国メーカー車のSUVシェアは通年として初めて4割を超え、過去最高となりました。また、JAIAメンバー各社は電動車などのラインナップを拡充した結果、EV・PHEVの販売も急拡大し、特にEVは2021年通年として前年の約2.7倍となる8,610台と、着実に販売台数を伸ばしました。
 
結果として、2021年合計では前年比1.4%増の259,752台となりました。また、日本メーカー車を含めた輸入車全体でも、前年比8.4%増の344,552台となりました。

3.2022年の輸入車販売展望

昨年から続く半導体不足の影響が2022年の販売に継続して影響する可能性があり、その影響にもよりますが着実に回復することを期待しております。

また、ワクチン接種など感染防止策が進み、外出や移動が正常化することで、日本国内でも消費マインド上昇の動きに寄与し、自動車市場の更なる回復にも効果が出ることを願っております。 

こうした状況を背景に、2022年の輸入車販売については、2021年に導入が始まった量販車種の新型車の受注と供給のバランスが正常化し、積極的投入が予定されている電動車やSUVをはじめとした新型車・限定車等が販売に寄与すると期待しております。特に、昨年の外国メーカー車新車販売台数の約4割を占めたSUV・クロスオーバーの人気が継続すること、また、JAIA会員各社は電動車のラインナップも着実に拡大し、政府の積極的な補助金の導入が功を奏し、輸入EV・PHEVの販売が更に拡大すると想定しております。また、昨年から続くテレワークの推進を背景とした地方移住や二地域居住などのライフスタイルの変化も自動車需要を増加させるものとして注目しております。

以上より、本年は回復の年として、販売台数は改善していくことを期待しております。

4.JAIAの主要活動について

JAIAの5つの主要活動の紹介及び進捗状況

1つ目として、JAIAの重要な役割である市場活性化に関する活動として、税制改正要望活動と環境・エネルギー分野にも関係する電動車の普及促進と認知向上の取組みについて
 
まず、税制改正要望については、本年は昨年12月に纏まった税制改正大綱に基づき、自動車関係諸税の抜本的な見直しに向けた議論が進んでいくと考えております。JAIAは、国際的に見ても過重な自動車関係諸税の負担の更なる軽減と税制の簡素化・公平化を求める要望活動を進めて参ります。 
 
続きまして、JAIAの電動車の取組みをご紹介する前に、まずは政府に対し、昨年2021年度補正予算が成立し、電動車の購入補助金と充電インフラ補助金を盛り込んで頂き、2022年度当初予算においても大幅増の政府案が閣議決定されたことに感謝申し上げます。
 
JAIA会員はこれまで、政府のご尽力も頂きながら、積極的に電動車のラインナップを拡充してきた結果、2021年はEV・PHEVの販売も急拡大し、特にEVは前年の約2.7倍の8,610台となっております。しかし、輸入車におけるEVのシェアはまだ約3%に過ぎません。
 
一方、諸外国の例として、ドイツでは新車乗用車販売に占めるEV・PHEVの割合が約26%と着実に増加しております。
 
このような状況の中、JAIAは昨年より輸入電動車普及促進のプラットフォームとして活動し、昨年6月に輸入電動車の認知向上を目的に、JAIA会員が一丸となってJAIA史上初の電動車展示イベントを実施しました。
 
その後11月にはメディアの皆様に輸入電動車の魅力を体験頂く為の「輸入電動車試乗会」を開催しました。JAIAは1982年より、輸入車試乗会を合計40回開催しておりますが、電動車に特化した試乗会は初めての開催となりました。
 
引き続き、JAIA会員各社が一丸となって魅力ある輸入電動車のラインアップを拡充するとともに、JAIAは電動車普及促進のプラットフォームとしての活動を更に推進して参ります。
 
具体的には、認知向上の取組みについては、昨年の東京での展示会・試乗会に続き、今年も開催地域も含めて新たな手法も取り入れた形で進めていく予定です。業界の垣根を越えて、充電インフラ関係企業の皆様とのコラボレーションなど、引き続き様々な工夫を凝らしながら実施して参ります。

また、電動車の普及の為には、誰にでも使いやすい充電インフラの充足が不可欠で都心部においては喫緊の課題であります。特に集合住宅を含む基礎充電設備とそれを補うための住宅地周辺の公共充電施設の充実が課題だと認識しております。
 
現在のEV・PHEVの購入層は、充電器が自宅にある方や、自宅の外での充電の手間と時間をいとわない方が大半となっております。しかし、政府によるご尽力やJAIA会員各社によるラインナップの拡充により、今後は潜在的な購入希望者が増加していく過程では、どこに、どの様な充電器があれば良いのかを把握していくことが重要だと考えております。
 
JAIAは充電器メーカー、公共充電ネットワーク関連企業や集合住宅に充電器を設置する事業者との意見・情報交換や会員向けの説明会開催など、さまざまな活動を行って参りました。
 
また、先に述べた11月の試乗会にも充電関係各社にご出展いただき、来場された報道関係者や政府関係者等の方々にも、集合住宅への充電器の設置をはじめとする充電インフラの充実がEV/PHEVの普及にとって、重要な課題であると受け止めていただきました。
 
今年もユーザーの利便性向上を図るため、政府や地方公共団体の皆様とも対話を重ね、効果的かつ焦点を定めた充電インフラの充実に向けた事業に取り組んで参ります。

2つ目として、カーボンニュートラル時代におけるに環境・エネルギー分野について
 
2030年度乗用車燃費基準は、2020年度基準に比べ、平均燃費ベースで44.3%の改善が求められるため、JAIAは欧州・米国で既に導入されているオフサイクルクレジットなどの制度的支援策の導入が必要と考えております。JAIAは政府とこの問題について意見交換を継続することを真に期待しております。一方、JAIA会員各社は、省エネルギー・地球温暖化防止対策などをチャンスととらえ、電動車や、高効率でCO2排出削減を可能とする先端技術搭載車をお客様に提供することによって、日本のカーボンニュートラル政策に貢献してゆく所存です。
 
カーボンニュートラル政策が確実に実行されてゆく過程では、ライフサイクルアセスメントの観点も重要です。インポーターの取り組みとして、リチウムイオン電池のリサイクルとリユースの課題に取り組むことは電動車の普及に欠かせないことであると認識しております。

3つ目として、JAIAの安全、基準認証の国際調和に関する活動について
 
安全・環境性能を確保した輸入車を日本の消費者へ追加コスト等をかけずに提供していくため、JAIAでは、関係当局とともに、国際的な基準の整合、さらに認証制度について国連の1958年協定に基づく相互承認制度が活用できるよう活動して参りました。
 
結果、車両全体での枠組みである国際的な車両型式認証制度であるIWVTAが2019年4月から運用が開始されました。また、2021年11月には重要な残課題であった排出ガス・燃費/電費に係る新規則の追加が自動車基準調和フォーラムで合意されました。これはテストサイクルの調和や、試験法や燃料性状の統一等の結果、自動車の主要な駆動力を生み出す装置がIWVTAの対象になることであり、JAIAとしてはより完全なIWVTA実現に近づく大きな一歩と考えています。
 
安全技術面では、日本の法令により段階的に衝突被害軽減ブレーキ、AEBSの義務づけの実施が決まっています。それ以外にも我々は、交差点対応等の高性能なAEBSや車線維持/逸脱防止装置、高機能前照灯などの機能等を拡大し、より安全な製品の提供を進めて参ります。
 
また、コネクテッド技術が発展する中で、通信技術を活用することで、車同士や人、社会インフラがシームレスに繋がることが可能となり、安心・安全や各種ユーザー利便性の拡大が期待されています。JAIAメンバー各社でも、緊急自動通報、盗難防止、自動駐車支援機能等や各種インフォテイメント機能を装備した車両導入を進めております。
 
さらに、究極の目標である事故ゼロの社会の実現に向けて開発が進んでいる自動運転については、今後商品化が進むことが予想される、高速道路など一定の条件下での自動運転技術であるレベル3のコア技術となる自動車線維持システム、“データ記録装置(DSSAD)”等の自動運転関連法規の国際調和も肝要となります。
 
また、自動運転車等の先進自動車の安全確保のためには、車載システムの”サイバーセキュリティ(CS)” / ”ソフトウエア・アップデート(SU)”等の法規も重要で、海外認証機関が発行したCS/SUマネージメントシステム適合証を国内でも活用可能とする等の効率化を検討していくことも必要と考えています。
 
このような取り組みを進めながら、JAIA会員各社としても自動運転やコネクテッド技術を搭載した車両を今後タイムリーに市場に投入し、より高い安全性及び利便性をお客様に提供することに貢献して参りたいと考えています。この点については、JAIAは必要に応じ、規制やルールに関して、我々の取組みに対するご支援を政府に要望して参ります。

4つ目として、自動車公正取引・アフターセールス等の活動について
 
自動車公正取引に関しては、JAIAは自動車公正取引協議会の作業部会に積極的に参加し、JAIA会員への自動車公正競争規約の周知徹底及び、公正な取引の確保を目指した活動を引き続き進めて参ります。
 
また、先ほど安全の所でも触れましたが、アフターセールス分野においても、コネクテッド技術の発展に伴い、様々なサービスが可能となっており、通信回線等を利用したソフトウエア・アップデート時の新たな許可制度、導入が決まっている車載式故障診断装置を活用した電子的な車両検査制度等や、整備士等のサービス要員の確保問題等の課題について、JAIA会員各社が適切に対応できるように活動して参ります。

5.二輪活動

最後に、モーターサイクルに関する活動について

輸入小型二輪車の新規登録台数は、23,073台で前年同期(21,293台)と比べ8.4%増となり、コロナ禍の「3密を回避した移動手段」として、更に「密に成らない遊び方」として趣味性が高く、個性的な商品が揃う輸入二輪車に目を向けて頂いたことが要因と考えます。
 
さて、二輪活動の大きな二本柱の一本目は「市場活性化のための活動」です。その一つとして昨年4月、2年振りにコロナ感染対策も実施した上で輸入二輪車試乗会を開催することができました。本年も昨年同様、4月に試乗会を開催する予定です。ご来場を心よりお待ちしております。
 
また、昨年12月に開催された東京都が主催する初の「EVバイクコレクション」に会員3社が出展しました。JAIAは今後も主要都市において同様な企画に積極的に参加し、カーボンニュートラルへの取り組みも進めてまいります。
 
JAIAは他団体と連携して、昨年11月に発表されたカーボンニュートラル達成への貢献を課題の一つとする「二輪車産業政策ロードマップ2030」に積極的に取り組んでまいります。この取り組みの一つに「高速道路の二輪車料金の適正化」があり、各種要望活動を展開した結果、二輪車の高速道路料金は、事前申し込みが必要であるものの、普通乗用車の50%の定率料金のキャンペーンが本年4月から実施されることになり、一歩前進しました。JAIAはさらなる利用環境の改善を目指して活動して参ります。
 
活動の二本目の柱である「規制の国際調和を図るための活動」に関し、昨年は二輪車の騒音の統一規定であるUNR41⁻05が国連会議で採択される等、JAIA二輪は、安全・環境規制の更なる国際調和の実現を目指して、引き続き、積極的に活動して参ります。
 
本年、新たな会員としてJAIA二輪に「カワサキモータースジャパン」様を迎えることができました。二輪会員としては初めて国内メーカー系の会員となります。JAIA二輪は2010年に2輪会員5社からスタートし、2016年には10社、11年目にして11社となりました。JAIAは今後さらに輸入モーターサイクル普及と国内二輪市場の活性化に取り組んでまいります。

6.結び

JAIA会員各社は引き続き、環境・安全性能に優れた魅力ある商品のご提供を続けるともに、JAIAは日本政府や自動車産業及び販売市場に関わる全ての組織と協力して、ユーザー負担を軽減し、また、カーボンニュートラル社会の実現に貢献して参ります。