理事長会見(2017年1月12日)

理事長会見 2017年1月13日

日本自動車輸入組合(JAIA)は2017年1月12日(木)、理事長会見を実施しました。
基調スピーチの内容は以下の通りです。

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ペーター・クロンシュナーブル 理事長

はじめに、昨年4月に発生した熊本地震により、多くの人々が犠牲者、被災者となられました。また、被災地の地域経済を支える生産設備や社会インフラ等も被害を受けました。本年には復興に向けた取り組みが一層進みますよう念願致します。

1. 2016年の実績

昨年の日本経済を振り返ります。昨年を通じて国内景気は緩やかな回復が続いておりますが、消費の回復は力強いとは言えず、国際政治情勢の変化、世界の経済情勢や金融資本市場の変動も続いております。

続いて、こうした日本経済全体の緩やかな景気回復の中で、昨年の自動車市場全体は、円高の影響や、燃費不正問題、地震の影響 などより力強さを欠き、市場全体では5年ぶりに500万台を割り、前年比1.5%減となりました。

昨年の輸入車市場を振り返りますと2016年1月から3月までの第一四半期までは、前年同期比で約2%減となり、2015年9月から7か月連続で前年同月比マイナスが続きました。しかし、4月以降は、JAIAメンバー各社の、プラグインハイブリッド (PHEV)、クリーンディーゼル(CD)等の次世代車や衝突被害軽減ブレーキ、車間制御付クルーズコントロール、レーンチェンジアシスト等の先進技術を装備した新型車の積極的な導入の効果等により、一転して9か月連続で前年同月を上回るなど、現在まで対前年比増加が継続しております。その結果、昨年、一年間を通じた輸入車の販売は、343,673台となり、前年比で4.6%と前年実績を上回り、台数としては過去5番目の高水準でありました。
外国メーカー車の販売は、295,114台となり、前年比で3.4%と前年実績を上回り、台数としては過去3番目の高水準でありました。

昨年の販売増の主因の一つであった外国メーカー車の次世代自動車のパワートレイン別の内訳を御紹介すると、プラグインハイブリッド乗用車が対2015年比126.8%増、クリーンディーゼル(乗用)車の販売は、対前年比75.9%増と一昨年に引き続き好調が続いております。

しかしながら、乗用車全体(4,146,459台)に占める外国メーカー乗用車のシェアは7.1%(前年は6.7%)であり、諸外国と比較すると、依然として小さいシェアでした。

2. 2017年の展望

2017年は、各種Digital技術(digital technologies)の統合(integration)の進展により経済、ビジネス全般の“Digitalization”が一層進むという世界の潮流に沿って、日本の自動車市場でも、格段に向上した安全・環境性能を実現する自動車の高度化・多様化のニーズが一層増大するとともに、将来の完全自動運転化に向けたlevel upへの期待が高まる年となると、JAIAでは見通しております。

JAIA会員の各社は、先端技術を一層搭載したE-mobility、クリーンディーゼル(CD)等を更に積極的にお客様にお届けする計画です。また、既に市場導入を開始している自動ブレーキ技術、車間制御付クルーズコントロール、レーンチェンジアシスト、パーキングアシスト等々の自動運転技術をさらに幅広いモデルに拡大することにより、将来の完全自動運転化(”Fully Automated and Connected Driving”)へ向けた着実かつ新たなステップを踏む計画です。

これらのJAIA会員の各社の計画は、必ずや日本のお客様の高度化・多様化するニーズに合致するものですので、2017年の輸入車の市場展望については、4月から続く増加傾向が継続すると見通しています。

他方、2017年の世界の政治・経済情勢見通しは、昨年の英国のEU離脱の国民投票の結果や米国大統領選の結果誕生した米国の新政権の発足が世界全体の政治・経済に如何に影響をしてくるか等、不確実性が大きいと見通しています。
 
また、日本の自動車市場見通しの条件の一つとなる将来の税制については、後ほどより詳しくお話いたしますが、私共JAIAは、消費税率の10%への引上げ時期が2019年10月まで2年半再延期され、それに伴い自動車取得税廃止についても延期となってしまったことは、ユーザーの為の税負担の軽減の実現が再度先送りにされてしまったことを意味し、日本の自動車市場と経済の回復に悪影響を与えることとなることを懸念しています。

JAIA会員各社は、Digitalizationの潮流への対応やパワートレインの高度化・多様化を求める、お客様のニーズ・期待に的確に応えるため、今後の自動運転技術に向けて、安全・環境性能の更なる向上を実現する最新技術を装備した「魅力あるImported Vehicles」を、さらに日本のお客様に幅広く提供してまいります。

また、JAIAと致しましては、以上のような会員各社によるニューモデル投入と最新技術を備えた魅力的なモデルの導入を支援すべく、本年以降も、税制改正要望、試乗会開催等の市場活性化活動を推進するとともに、日本の技術基準の国際調和のための検討・取り組みに、積極的に参加することを通じて、魅力のある輸入車を、何時でもどのようなお客様にでも、公平かつ平等な市場アクセスを確保して、お届けするよう、最善を尽くして参ります。

3. JAIAの活動計画

1) Activities to request for Tax Revision

 
まず、本年以降の税制改正要望活動計画の推進の際には、第一に、昨年12月8日に公表された「与党税制改正大綱」の中で「2019年度までに、総合的な検討を行い自動車保有者の税負担軽減のために、必要な措置を講ずる」と記述され残されてしまった課題の解決を目指し、「自動車税の引き下げ」を最重点に要望活動を行う計画である。この要望の目的は、自動車保有者の税負担軽減を図るとともに登録車と軽自動車の税負担の格差を是正を図るもので極めて重要であります。

第二に、重量税についても廃止を含めた抜本的な見直しをさらに要望してまいります。

2019年度税制改正に向けては、取得税については消費税率10%へ引き上げられる2019年10月1日時点での確実な廃止を求めていきます。
また、今回の税制改正で制度は延長されたものの基準が相当切り上げられた「エコカー減税制度」については、2019年度税制改正の際に、対象、基準が再度検討される予定ですが、「パワートレインの高度化・多様化やDigitalizationの進展」という潮流を踏まえ、EV, PHEV, Clean Diesel、燃料電池車、CNGに関連する技術開発のバランスの取れた進展を促進するような過度に厳格でない適切な基準の設定を要望してまいります。

2) 技術、環境分野での活動計画

 
次に、技術、環境分野における今後の重点活動計画を述べます。JAIAは、最先端の安全技術、環境対応技術、自動運転関連技術を搭載した世界のクルマを日本のユーザーに提供できるよう、長年にわたり、技術基準、環境規制などの国際的調和の推進を求める要望活動を行ってきており、本年以降も残された日本の独自基準や規制の国際調和が加速することなどを求めてまいります。これらの分野で最近進展が見られたいくつかの例や今後の計画を幾つかご紹介します。

(1) 国際的な車両認証制度(IWVTA)

第一に、日本の国土交通省のイニシアティブにより、国連の自動車基準調和世界フォーラムにおいて、国際的な車両認証制度である、IWVTA(International Whole Vehicle Type Approval)創設に向けた活動が進められています。昨年6月のWP29において58年協定の改訂が認められ、本年9月には発効される予定であり、制度全体が完成すれば、IWVTAで認可された車両について日本における認証作業の大幅な簡素化となるため、JAIAはこれを高く評価するとともに、大きな期待を寄せています。我が国ではIWVTAを一部採用した新たなる認証制度が2016年4月から開始されており、円滑な実施による認証制度の簡素化が引き続き進められることを期待します。

(2) デイタイム ランニング ランプの日本国内受入れ

第二に、JAIAが長く要望してきた、デイタイム ランニング ランプの日本国内での使用禁止が解除され、国連基準の受け入れにより国内使用が昨年10月から認められたことは喜ばしいことです。今後他の日本の独自基準についても国際調和がさらに加速するように要望活動を継続する計画です。

(3) 自動運転に関する活動(Activities concerning Automated & Connected Driving )

第三に、JAIAは、Digitalizationの潮流の中で、将来の自動運転技術導入・普及に向けたプログレスが調和的に進展するよう、国際調和の観点で合理的な基準や制度の改正が行われるように、ACEA、 JAMA等と協力しつつ、更に活動していく計画です。

また、内閣府に設置されているSIP-adus (Strategic Innovation Program-Automated Driving for Universal Service) は、今年の9月から大規模実証試験(Field Operational Tests)を開始する予定でありForeign auto makersの参加も歓迎するとの意向であります。JAIAは、2017年を通じて、SIP-adusと大規模実証試験等に関する情報・意見交換を更に行っていく計画です。

(4) 給油時の燃料蒸発ガス低減対策

環境省の審議会では給油時の燃料蒸発ガス低減対策を検討中で近い将来に報告書をまとめる予定であります。検討中の具体的な対策手法の候補としては、①給油ステーションの給油ポンプ側対策のStage II ②車両側対策のORVR(On Board Refueling Vapor Recovery) が挙げられています。JAIA は、対策効果を得るまでの迅速性や国際調和の観点から、「①給油ステーションの給油ポンプ側対策のStage IIを採用する方が費用対効果の高い対策で、合理的である」旨の要望活動を継続していく計画であり、今年はその要望実現に向けた取り組みを一層展開してまいります。

(5) 排気、燃費試験等の基準改正関連

JAIAでは、WLTP(World Light Vehicle Test Procedure)が2018年10月から国内に導入される予定が立ち、これに関する法令改正が行われたことを歓迎しております。

加えて、最近排気や燃費関連の基準や試験方法の強化やRDE(Real Driving Emission)と言われる実走行の排気規制の導入等が議論されており、排出ガスの強化については、国土交通省はこの1月にヒヤリングにより業界の意見を求めております。JAIAは国際基準調和に十分留意しつつ、また、海外の自動車メーカーに十分なリードタイムが設けられるように関係省庁と協議・調整を行ってまいります。

(6) 将来のパワートレインおよびインフラ

第六に、将来のパワートレインについてJAIAの考えを述べます。

殆どの自動車メーカーは、クリーンディーゼル、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池車およびCNG/LNG車といった次世代自動車の開発に重点的な投資を行っています。

関連の燃料の供給のためには、充電設備、水素ステーション、CNG/LNGのステーション等について、国際的に受容される基準に基づく新規のインフラを追加することが求められます。

代替パワートレイン間の競争が世界規模で激化する中、関連する燃料の安定的な供給を確保するためのインフラはまだ十分に整った状況にはありません。

新規の燃料・エネルギー資源の環境影響は、利用できる燃料・エネルギーの生産プロセスにより各地域によって異なってきます。
インポーター各社は、インフラ構築のロードマップと次世代自動車の国際調和基準がさらに必要になると考えております。

3)輸入モーターサイクル事業

 
先ず、輸入モーターサイクル関連の国際基準調和のための活動については、昨年4月に近接排気騒音に関する相対値化に基づく規制への改正が実現するという、大きな進展が有りました。

また、灯火器関連規制についてはDRLの基準が残っておりますので、昨年6月に日本政府から国連に提案され改正案に関して、今年国際的に合意が成立すれば、日本国内で採用され実施されますことを期待します。

次に、日本のモーターサイクル市場活性化のための活動については、昨年4月に、第二回JAIAモーターサイクル試乗会が成功裏に実施されことを踏まえ、2017年以降もJAIA試乗会を、継続開催する方針が確認されています。本年4月19日および20日に大磯にて第3回JAIAモーターサイクル試乗会実施予定です。本日ご出席の皆様にも是非ご参加していただければ幸いです。

4. 結び

結びになりますが、今後とも、JAIAは、ACEA、JAMAなど世界と日本の自動車関連団体との連携を通じて、また、政府・関係機関との協力を通じて、Digitalizationの潮流の中で、日本の自動車市場の持続可能な発展にさらに貢献すべく一層努力してまいります。