理事長会見(2013年7月17日)

理事長会見 2013年7月19日

日本自動車輸入組合(JAIA)は2013年7月17日(水)、理事長会見を実施しました。
会見要旨は以下の通りです。

上野 金太郎 理事長

冒頭挨拶

2013年の前半を終え、後半へと折り返すに当たり、本日は本年上半期における輸入車市場の動向、下半期への展望、さらには最近のJAIAの活動の主要な項目と課題などについて、お話しさせていただく。

私は、JAIAの理事長として、2月の就任直後の会見でも申し上げたが、私どもの活動の最も重要な要素は、会員各社から成る輸入四輪・二輪車業界の代表として、お客様の視点に立って公平な競争を推進するために、政府等の公共機関へ働きかけることにあると考えている。これは、ときには法律や規制の改訂、見直しに向けた活動となり、また例えば港湾設備の充実といった、会員各社共通の利益のために政府に対して設備投資を求める等、さまざまな分野にわたる。いずれにしても一社だけでは実現が難しいことでも、JAIAとして業界全体で行うことにより、より強力に、また効率良く推進できるわけで、私はこれからもこの機能を維持、強化していきたいと考えている。

現在、JAIAの会員各社は、私が代表を務めるメルセデス・ベンツを含め、その多くが海外メーカーの子会社だが、私どもは日本に法人登記する日本の法人であり、日本のお客様に世界各国で生み出される魅力的な輸入車をタイムリーにお届けすることがその使命である。こうして、「高い安全性や革新的な環境性能を備えた輸入車を幅広く提供」し、「世界で愛されるブランドが生み出す魅力ある製品」が、幅広く日本のお客様に受け入れられることによって、私どもの活動が日本の自動車市場の活性化、さらには日本経済への貢献につながると考えている。

2013年上半期の実績

本年上半期の国内自動車市場は、登録車が前年同期比11.6%減、軽自動車は前年同期比1.8%減と、昨年の上半期がエコカー補助金の追い風効果もあり順調に推移していたのとは異なり、たいへん厳しい結果となった。特に、登録車の2桁パーセントの減少は、国内自動車市場全体の縮小傾向を表すものとして懸念しており、また、軽自動車へのシフトがますます進んでいるものと理解している。

このような状況において、私ども輸入車、うち海外メーカー車の販売は、前年同期比12.6%増の約13万3千200台と、引き続き順調な成果を残すことができた。また、海外メーカー車の登録車全体に対する市場シェアは8.1%と、過去最高となった。 ただし、軽自動車を含む市場全体に対するシェアは、4.9%に留まっている。

日本メーカー車を加えた輸入車全体では、前年同期比13.3%増の約17万700台となった。日本メーカーの輸入が増えた要因は、日本メーカーの海外生産モデル数が増加していることにある。

海外メーカー車のうち、エコカー減税対象モデルは、当上半期では約66%、直近6月の単月では約68%に達した。これは各メーカーが日本の制度に合わせたモデルを順次開発、投入した効果が確実に表れた結果であり、海外メーカー車の販売が順調な基本的要因と言える。

この、日本のエコカー制度へ対応するための技術的アプローチとしては、エンジンのダウンサイジング傾向がますます進んでいる。小排気量化を図りながら、過給機等を用いてパワフルな走行性能を実現し、新開発の効率の良いトランスミッションと組み合わせることにより、運転する楽しさを損なうことなく、環境に優しい、燃費性能に優れたモデルを開発し、さらには、これらのモデルを比較的低価格でご提供できていることが、日本のお客様に支持された結果だと考えている。また、日本の厳しい規制をクリアした新世代のディーゼルエンジンの日本市場への導入も始まっており、お客様の選択肢を広げている。

さらに、衝突被害軽減ブレーキや、自動追従走行装置に代表される先進安全装備の積極的な導入など、日本よりはるかに長いクルマ造りの歴史を持った国々の技術や文化を背景に、個性豊かなモデルの投入が相次いでおり、それぞれ人気を博している。

一方、台数への寄与は少ないものの、最近の政府による景気刺激策である “アベノミクス”への期待も背景となってか、いわゆる超高級車とよばれる1千万円を超えるモデルも、好調に推移した。

2013年下半期への展望

前述のとおり、日本の自動車市場は、全体的な縮小傾向が続いている。これは最も懸念すべき点であり、JAIAは、市場活性化のために、現行の自動車関連税制等のお客様の購入意欲を阻害する要因を取り除くための活動を推進しなければならないと考えている。

今後の税制改正に向けて、JAIAは、日本自動車工業会様をはじめとする他の自動車関連団体と密接に連携を取り、軽自動車を含めての、公平かつ公正な税制改正が実現するようロビー活動を継続する。

一方、昨年末の政権交代以降、円高の是正やそれに伴う株価の上昇など、明るい見通しも少しずつ出てきている。ただし、株価の将来見通し、規制改革実行計画の実施スピードなど、不透明な材料も存在する。

下半期に向けても、各社より日本市場が求める環境性能と経済性を意識して投入した革新的なモデルが好調に推移すると見ており、当面は現在の基調が継続すると期待している。

したがって、2013年通年の展望としては、もちろん経済状況にもよるが、海外メーカー車の輸入で26万台を超え、27万台も視野に入ってくると考える。下半期においても引き続き、私どもJAIAの会員各社は、日本のメーカーとは異なるアプローチで性能を高めた、いわゆる「輸入車らしさ」を求めるお客様のニーズにマッチする商品のさらなる市場導入を推進するが、新しい魅力的な技術を装備した輸入車ができるだけ早く日本のお客様のお手元に届くためには、以下に申し述べるような課題の解決、例えば、自動車にかかる税負担の大幅軽減や規制改革のスピーディーかつ着実な実現が必要である。このような課題解決のために、JAIAは、輸入車業界を代表して、関係省庁への要望活動を継続する。

JAIAの活動

(1)税制改正要望

JAIAは、従来から他の自動車関連団体と連携して自動車に係る税の「簡素、低減化」を訴えており、取得税と重量税の廃止を強く要望してきた。しかし、与党による2013年度税制改正大綱では、「消費税率10%への引き上げ時点での取得税の廃止」は明言されたものの、残念ながら重量税は継続されることとなり、課題が残ってしまった。さらに、「自動車重量税を道路の維持管理・更新等のための財源として位置づけ、自動車ユーザーに還元されるものであることを明らかにする方向で見直す」などの方針が示され、一般財源化により課税根拠を失った重量税が、再び事実上特定財源化しかねない状況となっており、私どもは重大な懸念を持っている。

保有時にかかる税としては、自動車税と自動車重量税とがあり、自動車ユーザーはたいへんに重い税負担を強いられている。私どもは、引き続き自動車重量税の廃止を求めて、他の自動車関連団体と連携して活動する。

以上のような他の団体と共通の要望項目に加え、JAIAは次の2点を独自項目として要望している。

まず、
「・保有に係る自動車税を、国際的な見地を踏まえ現行の軽自動車程度の水準とし、車両の大きさ(寸法)ではなく、より排気量に直接対応した公平な税率設定とする要望」である。
そしてもう1点は、
「・燃料課税制度を抜本的に見直し、税負担を取得および保有から使用へと移行する要望」である。

また、海外メーカーは乗員や歩行者、また環境に優しい多くの先進技術を搭載したモデルを開発し、順次日本に導入しているが、日本で実施される政策的優遇措置においては、ぜひともこういった先進技術に配慮した、国際標準を見据えた制度設計を行うことを強く求め、輸入車が不利となる制度が構築されることのないよう、ロビー活動を展開している。

(2)技術、環境関連項目

私どもJAIAの会員各社は、国土交通省所管の道路運送車両法、経済産業省所管の省エネ法、自動車リサイクル法、火薬取締り法、高圧ガス保安法、環境省所管の大気汚染防止法、騒音防止法、廃棄物処理法、また総務省所管の電波法等、さまざまな法律のもとで、環境に優しく、また乗員と歩行者に安全な先進技術の導入に努め、日本の自動車モビリティの発展に貢献しようと取り組んでいる。しかしながら、海外ではすでに導入されている新技術が、日本では導入が困難な場面にたびたび遭遇する。

環境に優しく、安全に役立つ新技術の導入普及促進の観点から、JAIAが現在最も期待しているのは、国土交通省を中心に日本政府が推進する国連自動車基準調和世界フォーラムで検討されている、世界統一車両認証制度の構築である。私どもは、国ごとの独自規制が極力残らない形でこの制度が早期に実現するよう、出来る限りのサポートを行う所存である。

世界統一車両認証制度は、2016年に導入が開始されるが、その時点でこの制度に含まれていない規制、あるいは2016年を待っていては環境や安全面への対応が遅れてしまうものがある。これらの課題に関しては、今直ぐに取り組んでいただきたいと考えている。

具体的には、次の4点があげられる。
第一は、乗用車の世界統一排気・燃費試験方法と大型車の世界統一排気試験方法、
第二は、燃料電池車および水素タンクの安全性、
第三は、天然ガス自動車およびガスタンクの安全性、
第四は、環境に優しいエアバッグ、である。

(1)乗用車の世界統一排気・燃費試験方法の早期導入について
燃費と排気の基準は、私どもの商品企画と技術開発に大きく影響する。乗用車の燃費については、2011年に、2020年度の乗用車燃費基準が三省庁合同検討会で決定され、その際、燃費測定法として国連自動車基準調和世界フォーラムで合意されるならば乗用車の世界統一試験方法導入を検討することが決定されている。一方、乗用車の排気については、2012年の中央環境審議会の答申に基づいて、国内排気試験への世界統一試験方法導入が検討されていることを歓迎する。JAIAは、日本政府が諸外国と連携のとれた導入を進めることを要望する。

また、大型車の世界統一排気試験方法についても、2010年の中央環境審議会の答申に基づき、国内排気試験への世界統一試験方法の導入が進められていることを歓迎する。
次のステップとして、排気規制値や耐久走行試験等の統一と、世界統一車両認証制度への排気統一認証の導入を政府に対し求めている。私どもの最終的な目標は、欧米においてすでに認証を受けたモデルが、追加試験を受けることなく、そのまま日本市場に導入できるようになることにある。

(2) 燃料電池車および水素タンクの件について
JAIAは、日本の国土交通省のイニシアティブにより、今般燃料電池車および水素タンクの国連世界統一試験法が採択されたことを高く評価する。今後は、国土交通省と経済産業省とが一体となって、日本国内での採用が推進されることを期待している。しかし、それで全ての課題が解決した訳ではなく、タンク使用材料の規定やタンク・バルブへの刻印など、統一試験法に含まれていない項目もあるため、それらが早急に解決されることも必要である。その面からは、政府の規制改革実施計画において、高圧ガス保安法と道路運送車両法のパッケージ化や、使用可能材料要件の性能基準化等が計画されており、これらが速やかに実施されることを期待している。

(3)天然ガス自動車およびガスタンクの安全性について
燃料電池車と同様、日本の高圧ガス保安法の問題から、海外自動車メーカーは天然ガス自動車の日本導入に苦慮している。この件に関しては、世界統一基準である国連(UN)規則がすでに存在するので、それを国土交通省と経済産業省が連携して早期に採択することを期待している。

(4)水素エアバッグ・インフレーターについて
水素を用いたエアバッグは、副生成物が水だけとなり、人体および環境に優しいことから、欧米では急速に普及している。しかしながら、日本では高圧ガス保安法令上の規制により、日本独自の輸入検査要件の問題があり、事実上輸入できない状況となっている。本件は、点火装置として水素を用いることへの安全性の問題ではなく、日本独自の輸入検査要件自体に問題の本質がある。私どもは、水素エアバッグ・インフレーターの輸入検査からの適用除外という抜本的解決措置の実現を求めている。

(3)安全装備の普及促進策への期待

日本政府は、エコカー普及のためのインセンティブや補助金には非常に積極的だが、私どもが期待しているのは、事故削減に役立つ安全装備への税制インセンティブや補助金の導入である。

現在、大型車の衝突被害軽減ブレーキには税制上の優遇策が適用されている。しかし乗用車に対してのインセンティブ適用は皆無である。JAIAは、このような装置の普及のためのインセンティブや補助金の導入を期待している。

(4)二輪車事業

JAIAが二輪車のインポーターを会員として迎え活動を開始してから、今年で3年となる。

これまでに、JAIAは、輸入車特別取扱制度、PHP(Preferential Handling Procedure for imported vehicles)を二輪車が利用し易くするための活動、世界基準である国連法規(UN/ECE)の国内採用に向けた活動を展開し、技術・環境面の課題に関しては、一定の成果をあげてきている。

輸入二輪車は、四輪車と異なり、これまでは型式認証制度もPHPも利用していなかった。このことは会員各社にとっても、またお客様にとっても手続きや費用負担、利便性の面で問題があり、その解決が求められていた。JAIAは、PHPの二輪車による利用を目指し、国土交通省の担当者を招き勉強会を重ねてきたが、この取り組みの結果、現在までに、実際に数社においてすでにPHP認証を取得するまでに至っている。

また、これまでのJAIAの活動の結果、二輪車の騒音規制に関する国内基準は、国連法規で基本的に基準調和された。

今後は、二輪車の排気ガス、ランプなどの規制についても基準の国際調和に取り組むとともに、PHPの効率向上に向け運用面の改善に取り組む方針である。

また、もうひとつの課題は、昨年は持ち直したものの、近年まで長期漸減傾向にあった国内二輪車市場の活性化である。こちらの課題に対しては、JAIAは、自動車工業会様の二輪車特別委員会と協力しつつ、例えば、二輪車の運転免許制度の改善や、駐輪場の整備などを要望し、二輪車ユーザーの利用環境の向上に努める所存である。

(5)東京モーターショーへの共催参加

本年11月22日から12月1日にかけて開催予定の「東京モーターショー2013」に、JAIAは前回に引き続き共催団体として参加する。

私どもの役割は、まず、理事長がモーターショーの副会長に就任し、開会式をはじめ公式行事に参加する。また、事前準備のための各種会議に事務局が参加し、モーターショーの運営に対し、モーターショーが来場者にとって価値のあるものとなるよう、輸入車としての建設的な意見を申し入れている。
東京モーターショーは、環境性能と経済性、また優れた走行性能を兼ね備えた輸入車の魅力を、出展国産車とも比べながら、多数の内外の来場者が実感できる機会として成功すると確信しているが、メディアの皆様のご支援をお願い申し上げる。

終わりに

JAIAは、これからも日本自動車工業会様、日本自動車販売協会連合会様をはじめとする他の自動車関連団体との連携を図りつつ、経済産業省、国土交通省など政府関係部署との協調を通じて、輸入車市場の発展、さらには、安全で環境に優しいクルマ社会の発展のために努める。私どもは、様々な魅力ある輸入車を、多数お客様のお手元にお届けすることを通じて、日本の自動車市場とさらには日本経済の持続的発展に貢献していきたいと考えている。