理事長会見(2012年2月)

理事長会見 2012年2月8日

JAIAは2012年2月6日(月)、理事長会見を開催いたしました。
会見主旨は、以下の通りです。

ローランド・クルーガー理事長

 

1. 2011年の振り返り

昨年の日本は、東日本大震災という未曽有の災害と津波に見舞われ、何もかもが一変してしまった。多くの尊い命が奪われ、また、地震に伴う原子力発電所の事故により、今なお多くの方が避難生活を余儀なくされている。改めて、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げる。しかし、日本の皆様が、復興に向けていち早く歩み始めている姿は、世界に驚きと感動を与え、日本の強さを改めて印象づけた。また日本の自動車メーカー各社も、素早い生産体制の回復により、基幹産業としての役割を見事に果たしており、同じ産業に身を置く者として、心より敬意を表する。
私ども輸入車業界も、日本の一日も早い復興を願い、各社できる限りの対応を継続する。

2. 2011年の実績

昨年の国内自動車市場は、東日本大震災、またタイの洪水などの影響により、登録車の販売は前年比16.7%減の約269万台となり、ピークであった1990年に比べ半減し、軽自動車も、前年比11.9%減の約152万台と、いずれも2年ぶりの減少となった。
一方、海外メーカーの輸入車の販売は、前年比13.1%増の約20万6千台と4年ぶりに20万台を超え、日本メーカー車を加えた輸入車合計では、前年比22.5 %増の約27万5千台となった。登録車に占めるシェアは、海外メーカー車が7.7%、輸入車合計では10.3%と、いずれもJAIAがデータ集計を始めた1966年以来、最も高い数値となった。
海外メーカー車の「エコカー減税」対象モデルは約45%と、前年に比べ倍増。欧州車を中心に、エンジンのダウンサイジング、すなわち大幅な小排気量化と過給機の組み合わせ、および新開発のトランスミッションを組み合わせたモデルが各社からリリースされ、日本メーカーとは異なる方法で環境性能を追求し、パワフルな走りと両立させ、かつ運転する楽しみを損なわないクルマづくりが、日本のお客様に支持された結果だ。
さらに、個性豊かなモデルの投入も相次ぎ、それぞれ人気を博している。
また、昨年12月に開催された第42回東京モーターショーには、多くの海外メーカーが出展し、JAIAも共催者として開会式をはじめ公式行事に参加した。世界の多くの自動車メーカーが集うことで、お客様に自動車の素晴らしさを広く伝えることができ、国際ショーに相応しいものになったと自負している。

3. 2012年の展望

今後は、日本メーカーの生産体制が回復したことから、輸入車のシェアは少し低下するとしても、販売台数は昨年からの流れを維持し、さらに増加することを期待している。
各社が日本のメーカーとは異なるアプローチで環境性能を高めたモデルを続々し、「輸入車らしさ」を求めるお客様のニーズにマッチした商品を展開する努力を継続、強化することで、現在の基調を維持、拡大できると確信している。
電気自動車(BEV)やハイブリッド車(HEV)などの次世代自動車の投入等、新たな需要を生み出す新技術の導入も始まっている。このように、今まで自動車には使用されていなかった技術が魅力ある商品に体現され、それぞれのブランドによって販売されるようになってきた。
そうして、これまでに培ってきた高い輸入車のブランドイメージが、新技術によっても強化されていくことになると考える。

4. JAIAの活動

1) 技術関連項目

JAIAが取り組む技術関連課題については、(1) 世界統一排気燃費試験法(WLTP)、(2) 世界統一認証制度(IWVTA)、(3) 次世代自動車の3点を挙げたい。

(1) 燃費基準はCO2削減に最も貢献するが、同時に商品企画、技術開発にも大きな影響を及ぼす。それゆえ、燃費基準はJAIAにとって最大の関心事であり、試験方法の世界統一を訴えてきた。現在、日本の国土交通省のイニシアティブで世界統一試験法(WLTP)が国連の世界基準調和フォーラム(WP29)で検討されている。JAIAは世界統一試験法が成立した際には、日本も採用することを要請してきた。この点は、2020年の燃費基準に関する三省庁合同の委員会で取り上げることが了承され、新基準は2011年度内にも公布されると理解している。この決定に感謝するとともに、早期の実現を願う。

(2) また、昨年11月には、同じく国土交通省のイニシアティブにより、国連基準調和フォーラムにて自動車認証制度の世界統一基準(IWVTA)のロードマップが承認された。
今後、国土交通省と自動車基準認証国際化研究センター(JASIC)において具体的な制度設計案と基準案が作成される。IWVTAの仕組みが確立し、日本に導入されることは、安全で環境に優しい自動車、そして次世代自動車の導入および普及促進につながるものと考え、JAIAは国土交通省およびJASICの活動をサポートする。

(3) 次世代自動車の普及については、昨年新たに立ち上げた「次世代自動車委員会」(NGVC)を中心として、次世代自動車の導入を促進するための課題と方策を調査、検討する。
次世代自動車には、従来の内燃機関自動車では使用されていない二次電池や充電器などが用いられている。電池単体や充電器システムの性能、輸送時や廃棄時における安全性に関する世界統一基準、規格は存在せず、JAIAはこれらの世界統一基準、規格の策定と、日本での採用を求めることを検討している。
政府主導による補助金、インセンティブについては、税制改正要望活動と連携し、我々の独自の取り組みを更に促進するという観点から考え方を明確にする。

2) 税制改正要望活動

国際水準に比べて著しく高い自動車に対する税負担の軽減要望については、2012年度の「車体課税制度の全面見直し」に向け、自動車取得税と自動車重量税の全面廃止を求め、他の自動車関連団体と協調して活動を行ってきたが、残念ながら実現には至らなかった。今後も継続して自動車ユーザーの負担軽減のための活動を継続する。
具体的には、内部で組織する「税制タスクフォース」での検討に基づいてNGVCが責任を持って「税制改正要望書」の最終取りまとめを行い、経済産業省をはじめ関係省庁に提出する。また、政府が開催するヒアリングにも積極的に参加し、輸入車としての意見を述べる。
一方、「エコカー減税」の継続と「エコカー補助金」の復活が発表されたことは、財源不足のなか、政府が自動車ユーザーに対して配慮したものと感謝する。しかし、これらの施策は複雑であり、政府主導による施策に適合するためには、日本独自の燃費や排気試験法、型式認証制度に対応する必要があり、JAIAは、税制の簡素化を要望すると共に、海外メーカーにとって「日本専用仕様」を開発する負担を削減できる世界統一車両認証制度の早期実現のための活動を継続する。

3) 二輪車事業

2010年7月より開始した二輪車事業も今年で3年目を迎える。事業開始と同時に組織した「二輪車委員会」(Motorcycle Com.)を中心として、これまでは各社個別に対応していた課題に業界として取り組むことで、より効果的な対応と、目に見える成果を出すことを目的として活動を行っていく。
昨年は中環審による二輪車の排ガス、騒音規制の強化に対し、国際的な基準調和を踏まえた規制の在り方について提言した。
2012年は、認証手続きに関する業務において、その効率的かつ弾力的な対応が可能な仕組みの検討を、国土交通省の支援を得て重点的に取り組む。
一方、二輪車市場全体の減少傾向に歯止めをかけるため、日本自動車工業会(JAMA)の二輪車特別委員会とも協力して、市場活性化に注力する。

5. 終わりに

JAIAは、引き続き日本自動車工業会(JAMA)、日本自動車販売協会連合会(JADA)をはじめとする他の自動車関連団体や、経済産業省、国土交通省、環境省との連携を通じて、輸入車市場発展のために一層の理解と協力をお願いする。