インタビュートップ > Vol.18 テスラモーターズ ディレクター カート・ケルティー

テスラモーターズ ディレクター カート・ケルティー

テスラモーターズは2003年、アメリカのシリコンバレーに設立されたEV(電気自動車)専業メーカーである。2008年には初の量産車であるテスラ ロードスターが登場。2010年には日本法人であるテスラモーターズジャパンが設立され、東京・青山に日本1号店となるショールームを構える。また同年、トヨタがEVの共同開発を目的にテスラモーターズへ出資、パナソニックも電池の共同開発を開始するなど日本メーカーとの提携もはじまる。年々、存在感を増しているEVの急先鋒、テスラモーターズのカート・ケルティー氏にこれからの日本市場の戦略について話を伺う。

モデルSの1充電あたりの航続距離は500km以上。長距離ドライブもまったく心配ありません。

F 環境のことを考えてEVを選ぶ、EVに乗るという話ですが、電気を作る手段についてはどのようにお考えでしょうか? どうやって電気を作るのか? 石炭やLNGだとCO2が出てしまう。やはり風力なのか、太陽光なのか、あるいは原子力発電なのか?

ケルティー 先ほどギガファクトリーの話をしましたけど、あれは世界一大きな電池工場になります。そこではCO2の排出は一切なしです。太陽光発電か風力発電しか使わない。

F それはすべて自分たちで創電するのですか?

ケルティー 基本的には自分たちで作り、足りない部分は他社からも買います。他社から買ってもCO2はゼロです。いま工場を作っている段階でどういう設備を入れたらいいのか、CO2ゼロを念頭に設計されています。

F 日本はその問題に直面しています。すべての原子力発電所を停止したことにより、LNGを燃やし、1日に100億円ほど余計に支出している。

ケルティー そしてかなりのCO2を出していると。

F そうです。じゃあ、原発がいいのかといえばそれは難しいところですが。

ケルティー 日本にはすでに原発の設備があるわけで安全性の問題が確保されていれば当然、原子力の方が効率はいいでしょう。しかし、自然災害のリスクが高いし、これから新しい原発を建設するのはコストが合わない。アメリカの場合は、新しく発電所を建設する場合は、太陽光か風力、地熱発電のいずれかですね。いま風力発電はテキサスがすごくて、夜間に発電した電気を蓄電しきれずに捨てているくらいです。これを今後うまく蓄電技術と組み合わせていきたいと考えています。

F ところで日本はテスラにとって売れているマーケットなのですか?

ケルティー 我々は世界を大体1/3ずつに区分しています。北米、ヨーロッパ、アジアです。

F アジアで一番売れるのはやはり中国ですか? 環境を気にしている?

ケルティー 中国ですね。彼らはパフォーマンスで選んでいます。人口も多いですから。

F 今後はモデルXに続いて、モデル3、それから新しいロードスターも出るそうですが?

ケルティー モデルXはシャシー、電池、パワートレインなどがモデルSと共通のSUVです。モデル3は新しいシャシー、新しい電池パックなどすべて新規で開発しています。最初は小さめの4ドアでメルセデス・ベンツのBクラスくらいのサイズです。ロードスターについては、まだ具体的なスケジュールは発表していないのですが、いずれ出します。

F これからEVの比率は、テスラに限らず、ワールドワイドで増えていくとお考えですか?

ケルティー 当然増えます。モデル3が出る2018年末か2019年頃には、テスラだけで年間で50万台を作る予定です。ただし、それでも世界の自動車のシェアの0.5%です。我々のフリーモント工場、ここはもともとトヨタとGMが設立した合弁工場「NUMMI」ですが、ここでは50万台しか作れません。もちろん今後は新しい工場にも投資をしていきます。

F うんと先、例えば50年先にはガソリンやディーゼルがなくなって、すべてがEVになっているなんてことがあると思われますか?

ケルティー 50年経てば、あるかもしれませんね。ただこれからの20年間はガソリンがあるし、ディーゼルもあるし、EVもあるし、HEVもと選択肢はいろいろある。ですが、基本的にEVはガソリン車に劣るところはなにもありません。ですから何年先になるかわかりませんが、いずれはすべてEVの時代がくるかもしれません。

F 価格や航続距離の問題も近い将来解決できるのでしょうか?

ケルティー たしかにいまは価格の問題はありますが、それもギガファクトリーができるなどして、どんどん改善していくでしょう。航続距離もすでに500km走る。もう十分じゃないでしょうか。欲しいのは、急速充電の設備ですね。
アメリカではすでにEVを使いやすい環境が出来上がりつつある。私がサンフランシスコからロサンジェルスまで運転する場合、自分のモデルSを途中で2回充電します。2〜3時間運転して、トイレ休憩のあいだに20分充電する。それをもう2回繰り返すだけ。先日も家族4人と大きな犬とで休日にオレゴン州、ワシントン州まで10日間のドライブをしてきましたが、航続距離や充電の心配はまったくしませんでしたね。

F いちいち、どこのSAで止まって充電して、みたいな計画表を作らなくていいんですか?

ケルティー 基本的には考えなくて大丈夫です。すごく便利になっています。日本も将来的にはそうなると思います。

F テスラは日本規格のチャデモで充電できるんですか?

ケルティー チャデモも使えますが、なにかと面倒です(苦笑)。私たちのスーパーチャージャーは出力125Kwで、無料で、コンセントをさすだけです。

F 日本にもそのスーパーチャージャーで充電できるところがあるんですか?

ケルティー いま東京、大阪、神戸など全国6か所にあります。無料で充電できますし、これからどんどん導入していきます。

F いま日本のショールームは東京のほかに先日、大阪の心斎橋に国内2拠点目をオープンしたそうですが、ほかの場所にオープンする予定は?

ケルティー 計画はあります。将来的には、名古屋、神戸、福岡、横浜、広島にショールームを出したい。その前にまず、スーパーチャージャーを増やし、そして、サービスセンターを増やし、そのうえでショールームを増やしたい。

F ケルティーさんは電池の専門家でいらっしゃいますが、EVを普及させるうえで、バッテリーの値段を下げた方がいいとお考えか、高くても航続距離が長い方がいいとお考えでしょうか?

ケルティー これにはいろいろな意見がありますが、私たちとしては500km走れば、今のところ航続距離は十分。これ以上の航続距離はいらないと考えています。あとは値段を安くしたい。みんなが買いやすいようにしたいと思っています。

F 先日テスラに乗る機会がありましたが、EVの時代がきたんだなと実感しましたね。

ケルティー 多くの方にぜひ体感していただきたいですね。青山や心斎橋のショールームでも試乗できますし、箱根などで試乗イベントも行っています。実際に乗ってみたらきっと環境のことや難しいことは忘れて、とにかく買いたくなりますよ!

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インタビュアー:フェルディナント・ヤマグチ
コラムニスト。半導体・電子部品専門のマーケット・アナリストとしての顔をもつ一方で、コラムニストとしても活躍。「日経ビジネスオンライン」、「Tarzan」、「cakes」等に連載をもつ。トライアスロンを趣味とし、圧倒的なバイタリティでプライベートと仕事を両立。仕事の関係上誌面への顔出しはNGでマスクがトレードマークになっている。

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